●2~3年前は高根の花だったテラ(T)・バイト級ストレージの価格が,大幅に下がっている。シリアルATA/ATAハードディスク搭載製品が台風の目だ。
●低価格製品であっても,部門サーバー用やバックアップ用には性能や信頼性は十分だ。Tバイト単価30万円のストレージなら,ハードウエアRAIDだけでなく,コンポーネントの冗長構成などが可能である。

図1●テラ・バイト単価で見た現在のストレージ市場
個人向けNAS(ネットワーク接続ストレージ)の分野では,テラ・バイト単価10万円の製品も登場している。企業向けで注目されているのは,テラ・バイト単価30万円のストレージ。電源や冷却ファンが冗長化された外付けストレージ装置や,ハードディスクのホット・プラグに対応したNASなどがある。
表●主な低価格テラ・バイト級ストレージ
図2●10万円NASと50万円NASのベンチマーク結果
編集部で約10万円の「TeraStation」と,約50万円の「iStorage NS44P」のベンチマークを実施した。大容量データの書き込みと読み出しをして転送速度を測った。1つの大容量ファイルの転送で約3~4倍,ファイル数が極端に多いケースで約1.5倍の速度差が見られた。
図3●テラ・バイト単価26万円の「Xserve RAID」の可用性技術
インターフェースにFCを採用する外付けストレージ装置として,現在最もテラ・バイト単価が低い「Xserve RAID」。安価ではあるが,電源と冷却ファンの冗長構成やホット・プラグが可能であるほか,ハードディスクのホット・スワップやホット・プラグにも対応している。
 ハードディスクの容量増加と価格低下に伴い,ディスク容量が1テラ(T)・バイトを超え,しかも低価格のストレージ装置が次々と登場している。個人向けのNAS(ネットワーク接続ストレージ)なら1Tバイト当たり10万円で,企業向けのNASや外付けストレージ装置でも同30万~60万円で購入可能だ。2年前であれば,企業向けTバイト級ストレージは,最低でも同100万円はしていた。

 現在のTバイト級ストレージ製品市場は,Tバイト単価で(1)200万円以上,(2)100万円以上,(3)30万~60万円,(4)10万円——に分かれる(図1[拡大表示])。

 (1)は基幹システム用の製品,(2)はクライアント規模数千台のファイル・サーバー用の製品である。24時間連続してディスク・アクセスがあることを想定し,性能と可用性を追求している。高速で信頼性の高いFC(ファイバ・チャネル)ハードディスクやSCSIハードディスクを使用しており,様々なコンポーネントも多重化されている。

 これに対して(3)と(4)は,個人や部門ファイル・サーバー用の製品である([拡大表示]参照)。NAS装置または,FCを備えた外付けストレージ装置の2種類があり,24時間連続アクセスなどは想定していないが,シリアルATAやATAの安価なハードディスクを採用して,徹底した低価格化と大容量化を実現している。

侮れない性能と信頼性

 安価とはいえ,これらのクラスの信頼性や性能は侮れない。最も安価なバッファローのNAS「TeraStation(1Tバイト,10万6300円)」もRAID*コントローラを内蔵し,ATAディスク4台でRAID 5(パリティ付きストライピング)構成が可能である。ディスクが1台壊れてもデータが失われない。インターフェースはギガビット・イーサネットである。

 企業向けのNASになると,NECの「iStorage NS44P(1Tバイト,49万8000円)」など価格は高くなるが,故障したディスクを稼働中に交換する「ホット・プラグ」に対応するなど,TeraStationにはない可用性を備える。

 性能はどうだろうか。編集部でTeraStationとiStorage NS44Pのファイル転送速度を比較した(図2[拡大表示])。結果は,iStorage NS 44Pのファイル転送速度が,TeraStationを1.5~3倍上回った。もっとも,TeraStationの性能も少人数でのファイル共有には十分である。

 外付けストレージ装置だと,NASよりもさらに性能や可用性が上がる。外付けストレージ装置は,RAIDコントローラを内蔵して,それ単体でRAID構成が可能だ。サーバーとの接続インターフェースは従来SCSIだったが,最近FCが主流になってきた。SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)スイッチに接続もできるが,むしろ利用法は,DAS(ダイレクト接続ストレージ)装置としてサーバーにじかに接続することが多い。FCのHBA(ホスト・バス・アダプタ)は10万円を切っており,FCも随分身近になった。

 外付けストレージ装置の利点は,サーバー側にRAIDコントローラが不要で,サーバーに容易に接続できることや,装置本体に様々な信頼性向上の機能が搭載されていることである。アップル・コンピュータの「Xserve RAID」を例に,その機能を見てみよう(図3[拡大表示])。

 Xserve RAIDは,2Gビット/秒のFCを2個備え,Windowsサーバーにも接続可能である。最大データ転送速度は380Mバイト/秒。ハードディスク,電源,ファンの冗長構成やホット・プラグが可能で,ハードディスクに障害が発生した際に,空きハードディスクを自動的にRAIDに参加させるホット・スペアにも対応する。交換用のハードディスク,電源,ファン,RAIDコントローラのセットが27万900円で販売されており,障害発生時はシステム管理者自身の手で,特別な工具なしにコンポーネントを交換できる。

 RAIDコントローラのキャッシュ・メモリー(512Mバイト)の内容を守るバックアップ・バッテリもオプション(4万740円)で搭載可能だ。停電時に,ディスクに書き込む前のキャッシュ・メモリーの内容を,消えないように保持してくれる。

 管理用のイーサネット・ポートを備えていて,RAID構成やハードディスクの割り当てなどを,管理ツールからLAN経由で設定できる。管理ソフトは,Xserveは独自ソフトだが,他社製品ではWebブラウザを利用できるものがある(表参照)。かつての外付けストレージ装置では,本体の液晶ディスプレイとボタンを操作してRAIDを設定していた。

 稼働中のハードディスクの故障を予測して,問題発生前に管理者に警告を出す機能もある(ハードディスクのS.M.A.R.T.機能*を使用する)。Tバイト単価が40万~60万円のクラスになると,RAIDコントローラやサーバーとのパスの冗長化が可能だったり,ディスクの読み出し不良などの障害を自動的に回復する「自動リビルド」機能を備えたりするようになる。

 ディスク・ツー・ディスク・バックアップを使い出すと,部門サーバーでも数Tバイトの容量が必要になるだろう。今回紹介した低価格Tバイト級ストレージは,そのような用途に最適だ。