●マイクロソフトがWindows Small Business Server 2003を発売した。従来のバージョンと異なり,今度は「ユーザーの立場に立って本気で作った」と強調する。
●保守・管理向けの専用ツールや機能を装備し,ユーザーの負担を軽減した。専任管理者を用意する必要がないとしている。
●情報共有の仕組みが標準で設定され,社内外を問わずネットワークを介してどこからでもアクセスできる。ファイル/プリンタ共有以上の使い方が可能だ。

表1●Windows Small Business Server 2003のエディションによる仕様の違い
図1●SBS 2003専用の[サーバー管理]ツール
サーバーの保守・管理に必要な事項が一覧表示され,項目ごとに設定用のウィザードが用意されている。
図2●電子メールとインターネット接続の構成ウィザードの一画面
ネットワーク構成の図を例示しながら,どのように設定するのかが分かるように配慮されている。
表2●主なWindows Small Business Server 2003プリインストール機
 「今度は本気で作った。3年後(の中小企業への普及度合い)を見ていてもらいたい」――マイクロソフト常務執行役の眞柄泰利氏は2004年1月28日,「Windows Small Business Server 2003(SBS 2003)」の記者発表の席上でこう話した。「前バージョンのSBS 2000を発売して以来,3年の間に約10万社の中小企業の声を聞いた。それによって中小企業に入っていくには何が必要かを学んだ。これまでのSBSは既存の機能をマイクロソフトが勝手に1つにまとめただけだったが,SBS 2003は利用者の立場に立って製品化した」(眞柄氏)という。

 SBS 2003は主に中小企業のIT環境構築を目的としたサーバー製品である。Windows Server 2003を中核に,グループウエアのExchange Server 2003,情報共有のためのWindows SharePoint Services,リモート管理/リモート・アクセス機能などを統合し,すぐに使えるように構成されている。

 SBS 2003には,上記のような基本構成のStandard Editionと,さらにデータベース管理システムのSQL Server 2000やファイアウオール/プロキシ・サーバー・ソフトのInternet Security & Acceleration(ISA)Server 2000なども組み込んだPremium Editionの2つが用意されている(表1[拡大表示])。Windows Server 2003,Standard Editionとその他のサーバー・ソフトの組み合わせに比べて,「利用できるユーザー数が75まで」「対応するCPU数が最高で2個まで」などの制限はあるものの,SBS 2003には中小企業の運用・管理の負担を軽減する機能が盛り込まれている点が特徴である。

 例えば,保守契約を結んだシステム・インテグレータが遠隔地から管理できるよう,リモート・アクセス機能を充実させているのがその一例だ。しかも,「スモール・ビジネスといえども,信頼性は大規模ネットワークと同等のものが求められる。そのため,Windows Server 2003と同じ技術を導入している」(マイクロソフト サーバー プラットフォーム ビジネス本部Windows Server製品部の高沢冬樹部長)。

専任の管理者を置く必要がない

 これまでSBSは,Windows NT Server 4.0ベースと,Windows 2000 Serverベースの,2つのバージョンが発売された。これらのバージョンは,OSとサーバー・アプリケーションを1つのパッケージにまとめて価格を安くしただけで,管理・運用面で求められるスキルは中規模以上のWindowsシステムとほとんど変わりはなかった。

 だが,3つ目のバージョンとなるSBS 2003は,専用ツールを用意するなどして,ユーザーの管理・運用の負担を減らす工夫を凝らした。例えば,ユーザー・アカウントの作成や共有フォルダ/プリンタ,リモート・アクセスの設定など,サーバーでの各種設定事項に関しては,専用の[サーバー管理]ツールを用意した(図1[拡大表示])。各種設定・保守事項をチェック・リスト形式で表示し,設定しなければならない項目を順にたどっていける。

 個々の項目の設定作業もウィザードに従って操作していけばよい。図2[拡大表示]に示すように,インターネット接続のウィザードでは,SBSサーバーとインターネット回線の構成に応じて「LANボードを1枚または2枚差すか」「どのように配線するのか」を絵で見て確認できるように配慮されている。

 保守に関してもリモート・メンテナンスや自動レポート機能など,システム・インテグレータなどがリモート管理するための機能を充実させた。これらの機能で,サーバーの保守人員を都合できずに,これまで導入をあきらめていたユーザーにも訴求する。

いつでもどこからでもアクセス可能に

 エンドユーザーにとってもSBS 2003には利点がある。Exchange Server 2003で共有する情報に対して,Outlook 2003だけでなく,SharePoint Servicesを利用したWebサイトからもアクセスできる。このWebサイトは,クライアント・マシンのネットワーク環境をセットアップすると,Internet Explorerに自動的に社内ポータルとして設定される。

 さらに社外から共有情報にアクセス可能だ。サーバーの保守・管理だけでなく一般ユーザーにも提供されているリモート・アクセス機能を利用する。社外からインターネットを介して,自分のPCにリモート・デスクトップ接続することもできる。この場合は,まずSBSサーバーに接続し,そこからLAN上の自分のPCに接続することになる。このような設定に関するウィザードも用意されている。

激安のプリインストール機がハード・メーカーから発売される

 以上のようにSBS 2003自体,これまでのSBSや,ベースになっているWindows Server 2003に比べて機能が強化されている。さらに最近のハードウエアの性能向上と価格の低下もSBSには追い風だ。最近のハードウエア価格の低下には目を見張るものがあり,しかも性能は格段に高くなっている。

 実際,SBS 2003の発表を受けて,ハードウエア・メーカー各社が発売したSBS 2003のプリインストール機は非常に安い(表2[拡大表示])。例えば,デルと日本ヒューレット・パッカードは,SBS 2003 Standard Editionをプリインストールしながら,8万円台という機種を用意している。

 しかも,昨今のITブームでPC利用者の裾野が広がり,中小企業でもPCの利用経験者は多い。そこに,管理の負担が少ないサーバー・システムが低価格で手に入るとなれば,導入を検討するユーザーも出てくるだろう。

 実際,販売店の反応もよさそうだ。東京・秋葉原にあるラオックスTHE COMPUTER館3階の市村純一フロア長は,2004年2月6日のパッケージ販売初日に,「既に何件もの問い合わせの電話がかかってきている。以前のSBS 2000のときはほとんどユーザーの反応はなかったが,今回は反応がよい。今までは,導入しようと思っても保守まで自分で請け負うのは気が引けるというユーザーが多かった。今度のSBS 2003は管理者を置かなくても導入できるので,これなら今まで入っていけなかった中小企業にまで入っていけるだろう」と語る。

(山口 哲弘=yama@nikkeibp.co.jp)