●Windows NT/98など,クライアントOSのサポート切れが続々と到来する。ユーザーは「リース切れの時期」や「クライアントOSの統一」といった長期的な移行計画を重視しており,「サポート切れ」への関心は必ずしも高くない。
●しかし,クライアントの移行は徐々に進んで,2004年末には現在のWindows 2000に代わってWindows XPが主流となる見込みだ。
●オフィス製品はOffice 2000が標準となっていることが分かった。秋に登場する新Officeへの関心は薄く,マイクロソフトの今後のアピールが重要となる。

図1●クライアントOSとオフィスのサポート期限
図2●最も多く使っているクライアントOSの状況
サポートが切れるWindows NT/98は徐々に減っていく。Windows 2000も2003年末が頂点で,2004年末には減る。その分,XP Proが飛躍的に伸びていく。
 クライアントOSとして広く使われているWindows NT 4.0や98のサポート切れが,続々とやってくる(図1[拡大表示])。日経Windowsプロでは,2003年8月にWebサイトで主にシステム管理者を対象に「クライアントOS/オフィス製品に関する利用状況」の調査を実施した(有効回答数820)。

サポート切れを無視するユーザーも

 企業内で最も多く使われているクライアントOSについて聞いたところ,現状はWindows 2000 Professionalと答えたユーザーが過半数を占めた。次いでWindows 98,XP Professional,NT Workstation 4.0と続く(図2[拡大表示])。今後はXP Proを使うユーザーが順調に増え,2003年末で98を抜き,2004年末には2000も抜いて最も多く使われるクライアントOSとなる見込みだ。

 主力クライアントとして,2004年末でほぼサポートが終了するNT 4.0と98を使っているユーザーの動向を見てみると,2003年末までに98のユーザーは約4分の1,NT 4.0ユーザーは約3分の1が,Windows 2000やXP Proといった新しいOSに主力を置き換える。さらに,2004年末までには,98のユーザーで3分の2,NT 4.0ユーザーにいたっては5分の4が主力を移行する予定と答えている。その半面,2004年末でも主流のOSとして使い続けると答えたユーザーが合わせて7.7%と一定数は残る見込みだ。

 使っているクライアントOS全体についての質問でも同様の結果が出ている(図3[拡大表示])。NT 4.0や98,さらにMeといったサポート切れが近いOSほど,なるべく近いうちに移行を考えているユーザーが多い。しかし,NT 4.0と98ユーザーのうち約35%が「移行予定はない」と答えており,サポートの終了を重大な問題としてとらえていないユーザーが少なからずいる。

図3●現在使っているクライアントOSの移行予定
サポート切れが迫っているOSほど,移行時期が明確になっている。OS名のあとの括弧内は対象となるユーザーの実数。「2004年6月末までに移行」はNT 4.0ユーザーに対してのみの選択肢。
図4●クライアントOSを移行する理由(複数回答可)
ハードウエアのリプレースがトップ。続いて,OSの統一。サポート切れを理由にするユーザーは意外に少ない。
 では,ユーザーはクライアントOSの移行に当たって何を重視するのだろうか。今回の調査では,「パソコン本体のリース切れなどによるリプレース時期」が49%,「クライアントOSの統一」が45%とほぼ半数のユーザーが,この2つを重視すると答えている(図4[拡大表示])。続くのが「価格」の30%で,「マイクロソフトによるサポート切れ」は23%と4分の1以下のユーザーしか重視していない。

 このように,ユーザーは比較的計画的に移行を進める考えをもっている。そのためか,2000年2月の発売でサポート切れがまだ先の2000についても,ハードウエアのリース切れ時期を迎える2004年中には一部でXP Proへの移行が始まりそうだ。これが図2でWindows 2000 Professionalのユーザーが2004年末に減る理由と考えられる。

不満少なく新Officeへの関心は低い

 企業内で最も多く使われているオフィス製品をたずねたところ,「Office 2000」と答えたユーザーが66%と実に3分の2を占めた(図5[拡大表示])。Office XPが17%,Office 97/98が14%なのと比べると,企業内ではOffice 2000が標準環境といっていい状態だ。

 職場で使用するOfficeのバージョンに何らかの制約を課しているユーザーは多い。「推奨バージョンを決めている」という緩やかな制約のユーザーが40%と最も多く,「1つのバージョンを指定している」(28%)と「バージョンを複数指定している」(11%)を合わせると約8割のユーザーが該当する。一方,自由に選ばせているユーザーは19%に過ぎない。

 しかし,自由記入欄に書かれたコメントからは,統一するのは現実にはなかなか難しいことが分かる。例えば,「取引先に合わせる必要がある」「プリインストール版を使用している」といった声が代表的。こういった現状を解決する次善の策として「新しいバージョンで作ったデータでも,古いバージョンで確実に読めるように保証してほしい」という要望が多かった。

図5●Officeの導入状況とバージョンの指定方法
現在使っているのは,Office 2000が7割弱と圧倒的に多い。また,バージョンの指定は緩く,なるべく統一するようにしているユーザーが4割で1番多い。1つまたは複数バージョンをしているユーザーを合わせると同程度だ。
図6●Office Sysytemの導入予定と導入しない理由
6割以上のユーザーは次期版Officeの導入を考えていない。 その理由として7割のユーザーが現在のOfficeで機能的に不満はないからと回答している。導入時期を決めているユーザーは合わせて6%と少ない。
 年内に出荷予定の次期製品「Office System」については,64%のユーザーが「導入予定がない」と回答した(図6[拡大表示])。残りのユーザーは検討していると答えたものの,2003年末や2004年末といった具体的な導入計画を考えているユーザーとなると,合わせて約6%ほどだ。まだ出荷前の調査とはいえ,マイクロソフトの戦略通りに導入が進むか不安視される。

 なぜOffice Systemを導入しないのか,その理由を聞いてみると,「現在のバージョンで特に不満がないから」と回答したユーザーが72%と圧倒的。価格やハードウエア上の制約を導入しない理由として挙げたユーザーが17%だったのを考えると,少なくともオフィス内で単独に使う製品としての基本機能に関してはOffice 2000レベルで満足しているようだ。今後は,マイクロソフトがOffice Systemで強調している「企業内での情報共有インフラ」という主張が,ユーザーにアピールするかが普及の鍵になりそうだ。

MSのサポート期間は短いと不満

 マイクロソフトが企業向けクライアントについて保証しているサポート・ポリシーについても調査した。図1に示した現製品のサポート期間については,クライアントOSで64%,オフィス製品で53%のユーザーが「短すぎる」と回答している。「妥当である」と答えたユーザーはそれぞれ27%と35%で,サポート期間に関しては満足していないようだ。

 中でも,OSに関してはサポート期間の延長を望む声が強い。ハード減価償却期間である5年の2倍として10年程度のサポートを目安として希望するユーザーが多い。ほかにも,サポート期間の算出起点を出荷開始日ではなく,他の工業製品のように提供終了時期にしたり,製品が安定するService Pack 1の提供時期にしてほしいという声があった。これらに対してマイクロソフトは「サポート・ライフサイクルに対するユーザー皆様の反応については,真摯に受け止めたい」とコメントしており,今後の対応に期待したい。

(茂木 龍太=mogi@nikkeibp.co.jp)