読み込み速度やリソースの使用に課題

 現行版ではやや遅いと感じられたアプリケーション本体の起動速度はかなり改善しており,Officeとほとんど同程度の時間で起動できる。ただし,ファイルの読み込みには,時間がかかる場合があった。StarSuiteは,まず文書ファイルすべてを一度ディスクから読み出して,変換しながら取り込むようになっている。このため,数Kバイト程度の小さなファイルならあまり気にならないが,ファイルが大きくなればなるほど読み込みと変換の時間が必要になる。

 例えば,約1.5MバイトのWord文書を読み込んでみたところ,文書を表示するまでに40~50秒程度の時間がかかってしまった。Wordでは,はじめに表示される部分のみを読み込んだ段階でとりあえず画面に表示し,その後バックグラウンドで続きを読み込むようになっているのに比べるとストレスを感じることが多い。

 必要とするリソースが大きい点にも注意が必要である。タスク・マネージャで確認してみたところ,起動している文書の数やサイズによって異なるものの,StarSuiteのプロセスは約30M~50Mバイトという大きなメモリー空間を使用していた。このため,128Mバイトのメモリーを搭載したWindows 2000 Professionalのマシンで,複数のアプリケーションを同時に起動しながら切り替えて使うと,メモリーのスワップ操作などで全体の動作に影響を及ぼすことがあった。

企業内での混在利用にも問題がある

 企業内で使う場合を考えると,ほかにも問題となりそうなところがある。

 例えば,複数のユーザーがファイル・サーバー上で文書を共有している場合,Officeなら他のユーザーが開いている文書を開くと読み込み専用になるが,他のユーザーの編集が終了した時点で通知され,文書を編集できる仕組みになっている。しかし,StarSuiteでは,単なる読み込み専用として開くだけで,他のユーザーの編集が終了した後も通知はしてくれない。

 OSやBackOfficeといったマイクロソフト製品と密接に結びついている機能も同様に使うのは難しい。例えば,Windowsインストーラ対応ではないため,Active Directoryの環境であってもStarSuiteをクライアントPCに自動配布することはできない。同様にグループ・ポリシーなどを使って環境設定を管理者がまとめてカスタマイズすることも不可能だ。作成中の文書をExchange Serverのメールとして直接送信することも難しい。

自宅で使う個人ユーザーには有力

 ただし,ここまで指摘してきたポイントはいずれもStarSuiteをMicrosoft Officeの完全互換で使おうとした場合の話。単独のオフィス・ソフトとして見れば,基本的な機能は装備しており十分実用的な製品といえる。

図4●まったく同じデータでもStarSuite標準のXMLファイル形式にするとMS Officeのファイルよりも小さくなる
 特に魅力的なのは,その価格である。今回のバージョンから有償になったとはいえ,それでも標準価格で1万3800円。パッケージ版の販売を担当するソースネクストのWebページからは1万1730円で購入でき,小売価格も同程度になろう。一方,同等の機能を持つOffice XP Standardのパッケージは安くても約4万円が必要となる。

 特に,自宅でときどき仕事の続きをするといった程度のユーザーならば,前述した互換性や読み込み速度,リソースといったことも大きな問題とはならない。StarSuiteの場合は1ライセンスを最大5台のコンピュータで利用できるため,自宅にある複数のマシンにインストールして使ってもよい。

 企業ユーザーでも,まとまって導入しようという場合には検討する価値があるだろう。企業ユーザーはサンから直接にボリューム・ライセンスを受けることができ,150ユーザーで契約した場合は1ユーザーあたり7500円とやはり低価格での導入が可能である。将来的にITコストに対して増大する危機感をもっている企業の中には興味を持つところもあるだろう。

 仮にStarSuiteをまとまって採用すればサーバーのリソースも節約できそうだ。StarSuiteはOfficeの文書ファイルを読み書きできるが,本来の標準文書ファイルはXML形式を採用している。圧縮しながら保存しているため,文書ファイルのサイズは格段に小さくなる。実際に同じ文書で試してみたところ,StarSuite標準形式の方がOffice標準形式よりも格段に小さくなった(図4[拡大表示])。特に文書のサイズが大きくなるほど,その効果は大きくなる傾向のようである。

(根本 浩之=nemoto@nikkeibp.co.jp)