●マイクロソフトは2002年6月30日に,Windows NT Server 4.0のパッケージ販売とハードウエア・メーカーへのOEM提供を終了する。パッケージ販売の終了は,NT Server 4.0のサポートの縮小も意味する。
●日経Windowsプロは2002年4月に,Web上でサーバーOSの導入に関するアンケートを実施した。その結果,回答者の大半がまだNT Server 4.0を利用していることが分かった。多くの回答者はNT Server 4.0の販売延長を望んでいる。

 Windows NT Server 4.0のパッケージ販売およびPCサーバー・メーカーへのOEM供給の終了が今年6月末に迫っている。これに伴い,NT Server 4.0のサポートも今後順次縮小されていく。

 だが,本誌が2002年4月にWebサイトを通してシステム管理者向けに実施した「サーバーOSの導入に関するアンケート」の集計結果を見ると,Windows NT Server 4.0のパッケージ提供の終了が迫っているにもかかわらず,稼働中のサーバーに占めるNT Server 4.0の割合が依然として高いことが明らかになった。

 しかも,多くのNT 4.0ユーザーは今後のサポート面で大きな不安を抱えながらも,新しいサーバーOSへの移行を1年以上先送りする予定であることが分かった。

図1●現在利用中のサーバーOSは?(複数回答)
今回の調査(2002年4月)では,約58%のユーザーがWindows 2000 Serverを,約75%のユーザーがNT Server 4.0をそれぞれ利用していることが分かった。Windows 2000 Serverは前回の調査(2001年3月)に比べて増えているが,伸びはそれほど高くない。一方,NT Server 4.0は前回の調査に比べて減っているが,依然,Windows 2000より多い。2001年3月の回答総数は668,2002年4月は415。

7割を占めるNT Server 4.0ユーザー

 図1[拡大表示]は,現在利用中のサーバーOSをまとめたものである。今回の調査(2002年4月)と前回の調査(2001年3月)の結果を併記している。

 発売から5年が経過しているとはいえ,ユーザーの約75%はNT Server 4.0をまだ利用していた。これに対し,Windows 2000 Serverは発売から2年以上経過して普及期に入っているものの,利用しているユーザーは約58%にとどまった。

 NT Server 4.0の利用ユーザー比率は前回の調査(2001年3月)と比べて若干減っているが,Windows 2000 Serverよりはまだ多い。また,NT Server 4.0とWindows 2000 Serverの両方を利用しているユーザーに対して「どちらが多いか」を尋ねたところ,「NT 4.0のほうが多い」とする回答が「2000が多い」の約2倍もあった。NT Server 4.0はまだ現役の主流なOSであることが裏付けられた。

 一方,Windows 2000 Serverを利用しているユーザーは前回の調査に比べて増えている。ただし,伸びはそれほど高くない。

 NT Server 4.0より一足早くサポートの縮小が始まったNT Server 3.51以前のバージョンのユーザーも,まだ全体の1割程度いる。前回の調査と比べてわずかに減っているものの,ほとんど変わらない水準である。

利用実態と必ずしもかみ合わない製品/サポートの提供サイクル

図2●6月末に販売終了するNT Server 4.0パッケージに対して販売期間の1年以上の延長を望むユーザーは7割近い
NT Server 4.0ユーザーの大半が,「Windows NT Server 4.0のライセンス供給のうち,パッケージ販売とメーカーへのOEM供給が2002年6月末に終了する」ことを知っていることが分かった。また,7割近くのユーザーは「1年以上延長してほしい」という結果が出ている。

 NT Server 4.0の提供終了やサポートの縮小は,NT Server 4.0で業務アプリケーションやデータベースを運用しているユーザーにとっては切実な問題である。せっかく安定稼働しているシステムをいじりたくないし,簡単に別のサーバーOSに移行できるものでもないからだ。

 例えば,OSをアップグレードすると,データベースなどのパッケージ・ソフトも一緒にバージョンアップしなければならない場合がある。業務アプリケーションの動作検証も不可欠であり,部分的なプログラム修正が必要になることも少なくない。

 加えて,景気低迷によって,アップグレードの予算が十分に取れない企業は多い。つまり,「移行したくてもおいそれとは移行できない」のが実情である。古いOSが使われ続けていることを示すアンケート結果は,こうした実態を浮き彫りにしている。

 同時に,Windowsの製品/サポート提供サイクルが利用実態とかみ合っていないことも示しているようだ。例えば,「NT Server 4.0のパッケージ販売が終了すること」に対するユーザーの意識が,それをよく表している。

 「Windows NT Server 4.0のライセンス供給のうち,パッケージ販売とメーカーへのOEM供給が2002年6月末に終了することを知っていますか?」との問いに対して,NT Server 4.0ユーザーの約8割が「知っている」と回答した(図2[拡大表示])。しかし,パッケージの販売期間の延長を望むユーザーは非常に多い。NT Server 4.0ユーザーの約7割が「1年以上延長してほしい」という結果である。

マシンの更新を考えている企業は早急に手配したほうがよい

 とはいえ,OSやアプリケーション・ソフトはそのままでも,古いマシンを最新スペックのマシンに切り替えたいユーザーもいるだろう。その場合は,NT Server 4.0の動作保障が得られるうちに新しいマシンの購入を手配したほうがよい。

 NT Server 4.0のライセンスのうち,マイクロソフトがパッケージ販売とメーカーへのOEM供給を終了させるのは2002年6月末。2002年7月から2003年6月末までの1年間は,国内に数社ある「OEM製品正規販売代理店」経由で間接的なOEM供給を受けることは可能だ(図3[拡大表示])。

図3●Windows NT Server 4.0のライセンス供給とサポートの提供の打ち切り時期

 ただし,サーバー・メーカーがNT Server 4.0の動作を保障したマシンを提供し続けてくれるかどうかはメーカー次第だ。NECは既に,マイクロソフトのスケジュールより早く2002年5月18日でプリインストール・マシンの受注をストップした。デルコンピュータは6月末で受注をストップする。

 コンパックコンピュータは,Webのダイレクト通販で2002年7月以降もプリインストール・マシンの販売を続けるが,いつまで販売するかは決定していないという。しかも,今後新たに登場したサーバーの構成部品に関して,「NT用のデバイス・ドライバを開発しないかもしれない」と,一部制限が付く可能性を示す。

移行の必要性は感じているが, 実際の移行は1年以上先

 もちろんユーザーは,サーバーOSの移行は不可欠と考えている。「今後もNT Server 4.0を使い続けますか」との問いに対して,NT Server 4.0ユーザーの約9割が「いずれ別のOSにアップグレード,あるいはリプレースする予定」と回答している。その最も多い理由は,当然ながら「古いOSのサポートがなくなるから」である。

 NT Server 4.0ユーザーが今後増やしたいと考えるサーバーOSは「Windows 2000 Server」が約67%で予想通りのトップだ(図4[拡大表示])。減らしたいサーバーOSはやはり約8割のユーザーが「NT Server 4.0」と答えた。

 しかし,OSの移行時期は「2003年5月以降」とする回答がNT Server 4.0ユーザーの約7割を占めた(図5[拡大表示])。このうち,移行は2年以上先と答えたユーザーも全体の約3割に達した。既にOSの提供は完全になく,ホットフィックス(セキュリティ・パッチを除く)も一切提供されない時期である。システム(ハードウエアやアプリケーション)の寿命が尽きるまで,なんとかして使い続ける覚悟のようだ。

図4●NT Server 4.0ユーザーに聞いた今後増やしたいサーバーOSと減らしたいサーバーOS(複数回答)
NT Server 4.0ユーザーの大半は今後NT Server 4.0を減らす意向だ。増やしたいサーバーOSとして,Windows 2000 Serverが約7割を占めているが,Linuxも突出した存在になっている。
 
図5●NT Server 4.0ユーザーに聞いたOSの移行時期
マイクロソフトからサーバー・メーカー各社へのOEM供給とパッケージ版の販売は2002年6月末で終了するも,NT Server 4.0ユーザーの7割以上は移行を1年以上先送りすると回答。

(小野 亮=akono@nikkeibp.co.jp)