●Windows XPは,PCを入れ替える際,OS設定や文書ファイルなどを移行先XPマシンに転送する機能を備える。
●ウィザードに従って簡単に処理できるツールと,多数のPCを導入するときに,コマンドで処理を自動化するツールの2種類がある。
●各ツールでは,分かりにくい場所にあるファイルやOSのレジストリ設定も移行先PCに転送できる。

図1●Windows XPは従来の設定をコピーできる移行支援ツールを備える
ファイルやフォルダの内容,OSやメール・アカウントの設定などをWindows XPに移行できる。ただし,Officeなどのアプリケーション本体を移行することはできない。
図2●ウィザードに従って移行データを作成できる
Windows XPのCD-ROMにあるSetup.exeを実行し,[追加のタスクを実行する]-[ファイルと設定を転送する]を実行すると,ファイルと設定の転送ウィザードが起動する。マイドキュメントやOfficeファイルなどデフォルトで設定されているもの以外に,ユーザーが移行したいデータを指定できる。
図3●Windows XPマシンで[ファイルと設定の転送ウィザード]を起動して移行データを取り込む
スタート・メニューからウィザードを起動できる。移行元と移行先のパソコンがネットワークで接続されている場合,両方でウィザードを動かしておけば,ネットワーク経由で直接データを転送できる。
図4●Windows XPに標準添付のScanState.exeとLoadState.exeを使った移行スクリプトを作成して実行することで処理を自動化できる
Windows XPに移行するパソコンの台数が多い場合に作業の手間を少なくできる。移行ルールINIファイル(Migapp.infやSysfiles.infなど)をカスタマイズすることで,レジストリの変更など,ファイルと設定の転送ウィザードより詳細な設定ができる。Windows XPのCD-ROMのValueadd\MSFT\USMTフォルダにある。
図5●サード・パーティ製品の移行ソフト「PCアップグレードコマンダー」
移行先のパソコンのハードディスクを調査して,移行元にないファイルのほぼすべてをコピーできる。アプリケーション本体も移行できるので,新しいパソコンで再インストールする必要がない。

 システム刷新やリース切れなどのタイミングでPCを入れ替える際,移行元になるマシン上で作成した文書ファイルやメール・ソフトのメッセージなどをどのようにして新しいPCに移すかは大きな悩みだ。

 OSやアプリケーションのインストールは,プリンストールPCを購入したり,外部業者に作業委託したりすればよいが,ユーザー・データのコピーやOSなどの再設定は煩雑な手作業になりがちでミスも生じやすい。

 Windows XPは,マシンの移行時に発生する上記作業を支援する新機能「ファイルと設定の転送ウィザード」を備える。移行元として,Windows 95/98/Me/NT 4.0/2000/XPマシンを,移行先としてWindows XPマシンを指定できる。転送対象は,大きく分けてファイルやフォルダなどのユーザー・データとOSやアプリケーションの設定がある(図1[拡大表示])。

 標準で転送対象となるユーザー・データは,マイドキュメント・フォルダやデスクトップに置いたファイルやショートカット,アドレス帳などだ。MS Office関連の拡張子が付いたファイルも対象になる。これら以外にも,ユーザーが指定したフォルダなどを追加指定できる。

 ユーザー・データは,単なるファイル・コピー操作やコピー・コマンドでも新しいマシンに転送できる。ただし,転送したいファイルはディスク全体に散在し,場所が分かりにくい場合が多い。詳しい知識がないと漏れなく移すのは困難である。また,OSの設定やメール・アカウントなどアプリケーションの一部データは,単なるファイル・コピーでは移行できない。

 Windows XPの「ファイルと設定の転送ウィザード」では,Outlook/Outlook Expressで受信したメッセージのように分かりにくい場所にあるファイルを,詳しい知識がなくても転送できる。また,メール・アカウント情報やInternet Explorerで設定した内容,ネットワーク・ドライブの割り当て,タスク・バーの表示位置などを移行先マシンで使用できるようにする。

ウィザードで簡単に転送できる

 ツールの処理は,(1)移行元PCで使っていたデータとアプリケーション設定の収集,(2)収集データを移行先PCへ転送する,の以上2段階から成る。各処理の操作は簡単で,ウィザードに従うだけだ(図2[拡大表示])。

 転送形態としては,LANやシリアル・ケーブル経由で移行元PCのデータを移行先PCに直接転送するものと,移行元PCのデータなどを一度ファイル・サーバーやリムーバブル・メディアに抽出・保管して,移行先PCで取り出すものの2つを選べる。

 移行元PCをクリーン・インストールしてXPマシンにするときや移行元マシンを取り去ってからXPマシンを設置するときは,サーバーなどにいったん保管する形態で行う。

 移行元PCにWindows XPのCD-ROMをセットする,もしくはCD-ROMのSetup.exeを実行すると,メニュー一覧が起動するので,該当するものを選び実行する。サーバーなどに抽出したデータをWindows XPマシンで取り出すには,移行先マシンのスタート・メニューで「ファイルと設定の転送ウィザード」を実行する(図3)。

 移行元と移行先PCの両方を一時的にでも同時に置ける場合は,LAN経由が手っ取り早い。クロス・ケーブルで直結する必要はなく,ハブを挟んでいても,お互いのパソコンをブラウズできる程度にネットワークの設定をしておけばよい。

 移行元と移行先マシンの両方でウィザードを起動すると,自動的に転送先を認識してデータを転送する。受信終了後に再起動すると,以前のPCの設定が移行先PCに反映される。

大量PCの設定用にコマンド版を用意

 Windows XPのCD-ROMには,移行データの作成とデータ転送を自動処理するコマンド「User State Migrationツール」も入っている。スクリプトを作成すれば,処理を自動化できる(図4[拡大表示])。大量PCの移行に便利である。

 コマンドは2つある。移行元PCで「ScanState.exe」を実行すると,転送データの抽出と,ファイル・サーバーなどに抽出データを保存するまでを処理する。次に移行先PCで「LoadState.exe」を実行すると,サーバーなどから抽出データを取り出すとともにマシンに適用する処理が行われる。

 標準設定では,ウィザード版ツールと同様に,マイドキュメント・フォルダやMS Office関連のファイルや設定を転送できる。任意のファイルやフォルダ,レジストリ設定などを移行する場合は,移行ルールINFファイルをカスタマイズして指定する。注意点は,マシンがWindowsのドメインに参加していないと使えないことだ。

Windows 2000などへ移行するならサード・パーティ製ツールを選択

 「ファイルと設定の転送ウィザード」や「User State Migrationツール」は便利な半面,いくつか制限がある。制限が問題になり使えない場合は,ソフトボートの「PCアップグレードコマンダー」(図5)のようなサード・パーティ製ソフトが便利である。

 この製品では,データ転送先がWindows XPに限定されない。Windows 98からWindows 2000へ移行する場合などにも使える。転送対象も広く,2台のPCの中身を調査して,新しいPCにないファイルやレジストリ設定をすべて転送する。アプリケーション・プログラムの転送も可能だ。

 ただし,互換性のないアプリケーションや他のマシンに移すとライセンス違反になるアプリケーションまで転送するので注意する。

(伊藤 康生=yaitou@nikkeibp.co.jp)