●マイクロソフトが次期クライアントOS「Windows XP」をいよいよ11月に発売する。企業ユーザーはこの新OSにどう対応するか。アンケートで情報システム担当者などに導入意識を尋ねた。
●来年増えると思われるクライアントOSとしては,2番目に多くの回答者がWindows XP Professionalを挙げた。
●ただし,Windows 95をメインOSとするユーザーを中心に来年もWindows 2000が増えるという意見が最多。Windows XPの本格導入の時期も,発売から1年後と見る回答者が最も多かった。

 マイクロソフトの次期デスクトップOS「Windows XP」発売までいよいよ2カ月を切った。国内では11月16日からパッケージの小売販売が始まる。

 企業ユーザーはこの新しいOSにどう対応するか。それを調べるため編集部は,7月30日から日経BP社のWebサイトでアンケート調査を行った。質問は,日経Windows 2000の9月特集で掲載した「クライアントPCの導入や移行に関するアンケート」の一部になっている。

 調査では,多数の回答者が,来年Windows XPの導入が自分の関与する範囲で増えると見ていることが分かった。

 ただし,来年Windows XPが増加するとした回答者の比率は,最多ではなかった。

図1●Windows XP Professionalは来年増えるクライアントOSの2番目
最も多くの回答者が挙げたのは,Windows 2000 Professional。2番目がWindows XP Proで,3番目が同Home Editionだった
 図1左[拡大表示]は「来年増えると思われるクライアントOSは?」という質問に対する回答の集計結果である。この中で最も多い回答は,Windows 2000 Professionalで60.5%。2番目がビジネス・ユーザー向けといわれるWindows XP Professionalの42.7%で,3番目に一般消費者向けのWindows XP Home Editonが来る。

 企業ユーザーは,全般に新OSの導入にじっくりと取り組む傾向があるが,質問は単に「増える」かどうかを尋ねている。現在,Windows XPマシンを導入している企業は皆無なので,1台でも入れれば「増える」と回答できる。この点を踏まえるとやや勢いに欠けると感じる。

今年増えるWindows 2000を多くのユーザーが来年も増やす

 アンケートの他の質問の回答や自由回答欄に書かれた意見などから理由が推測できる。

 1つは,現在多くの企業が大勢としてWindows 2000の導入に力を入れ始めている背景がある。同じアンケートで今年になり増えているOSとして最も多くの回答者が挙げたのは「Windows 2000 Professional」。全回答者の64.6%と非常に高い比率だ。

図2●来年Windows XP Proが増えると見る比率が低いのは,Windows 95が現在最多の回答者
現在Windows 95が最多とする回答者(灰色)は,XPよりWindows 2000が増加すると考えている。一方,Windows 2000マシンが現在最多とする回答者(緑色)は,来年Windows XPが増えると考えている
図3●安定性の高さが利用を増やす理由のトップ
「安定性が高い」が46.6%で最多。Windows XPと2000が来年増えるのもそのためだろう
 これまで企業は,動作アプリケーションの豊富さなどからWindows 9x系を中心に活用してきた。これが今ようやく「Windows 2000がService Pack2を経たことと,動作アプリケーションが増えたことで,Windows 2000という選択肢が選べるようになった」(埼玉県・男性)と感じる段階。これではまだ動作アプリケーションの情報などが不明確なWindows XPの導入に二の足を踏むのはやむを得ない。

 Windows 9x系OSを導入してきたユーザーもまずはWindows 2000が増えると考えているようだ。特にWindows 95が関与する範囲で最多とするユーザーで,Windows XP Professionalが増えると回答する比率が比較的低い。

 図2[拡大表示]は,「来年増えると思われるクライアントOS」に対する回答を,回答者が関与する範囲で最も多く使われているOS別に分けたグラフである。

 灰色の棒で示した「現在Windows 95が最多」とする回答者の答えに注目してほしい。Windows XP Professionalが来年増えると見る比率として灰色の棒が最も短いことが分かる。

 Windows 95は昨年12月で製品の通常提供が終了し,大量購入は難しくなっている。マシンの更新時期を迎えたユーザーには,Windows XPの発売を待つ余裕はないためと思われる。

Windows XPは「安定性」への期待で選ばれる

 半面,図1[拡大表示]で2番目に多い回答者が,Windows XP Professionalが来年増えると見ている。これは同OSの導入を見送ると決めたユーザーがまだ少数派だということだろう。

 Windows 9x系のOSの不安定性さに悩まされたユーザーにとっては,Windows NT/2000系OSの一員であるWindows XPの安定性に対する期待は高い。アンケートでも「来年増えるOSを選んだ理由」に対する回答では「安定性が高い」が46.6%でトップだった(図3[拡大表示])。

 自由回答欄にも「XPによって,やっとPCの安定稼働が手に入れられそうである。これまでその部分にとても悩まされてきた」(神奈川県・男性)という切実な意見があった。

 図2[拡大表示]からは,Windows 2000 Professionalが現在最多というユーザーがWindows XP Professionalの導入に前向きな様子もアンケート結果から読み取れる。これも来年増えるOSを選んだ理由として安定性を求める回答者が多いことの影響と思われる。

2000とXPの混在は是か非か

図4●本格導入はWindows XP発売から1年後が最多
Windows XPの本格導入時期は発売1年後が最多で43.0%を占める
 アンケートでは「Windows 2000を導入(導入予定)するので,当面Windows XPの導入の予定はない」という回答も28.1%あったが,「Windows 2000を導入(導入予定)しているが,Windows XP発売後はこちらも導入する」という回答も16.0%に達した。具体的な態度を決めたユーザーはまだ少数なので,絶対値としてはそれぞれ低いが,Windows 2000 Professionalを採用するユーザーは,混在を許容する傾向もあるようだ。

 Windows XPの本格導入時期は,発売1年後ぐらいがピークになりそうだ。「関与するシステムにWindows XPを導入するのはいつ」という質問への答えとしては,「発売から1年後」(43.0%)を挙げる回答者が最も多くなっている(図4[拡大表示])。

 次いで,「発売から半年後」(22.3%),「発売から2年後」(18.9%)の順に多い。予想なので絶対値は今後変化するだろうが,順位には注目できる。

(干場 一彦=hoshiba@nikkeibp.co.jp)


調査方法と回答者属性

システム担当者など1883人が回答

 アンケートは「クライアントPCの導入や移行に関するアンケート」というタイトルで,今年7月30から8月6日にかけて行われた。弊社のメール配信サービスなどで実施を案内し,Webページから回答者が関与する範囲のシステムについて回答を記入してもらっている。1883人から回答を得た。
 回答者がクライアントPCに関与する立場として最も多いのは「全社システム構築から運用管理までの担当者」で20.0%だった(図A)。回答者が所属する部門としては「情報システム」が38.4%で最多(図B)。
 回答者の勤務先の産業/業種は,非コンピュータ関連企業が,57.6%,コンピュータ関連企業が41.4%。勤務先の従業員数は「100~999人」(35.2%),「1000~9999人」(24.3%),「10~99人」(21.4%)の順に多かった。
 回答者が関与しているシステムで利用しているクライアントの総数としては「10台以上50台未満」が最も多く34.2%を占める。
図A●回答者がクライアントPCに関与する立場
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図B●回答者が所属する部門
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