NT 4.0対Solaris 7の次はWindows 2000対Solaris 8。サン・マイクロシステムズは3月末,Solarisの新版であるSolaris 8の出荷を開始したが,一足先に登場したWindows 2000への対抗心をむき出しにしている(図1[拡大表示])。一方,マイクロソフトも負けていない(図2[拡大表示])。Web上ではすでに情報合戦が始まっている。
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両社が覇権を握りたいのは,インターネット・ビジネス向けのサーバー市場。特に大規模なデータセンターの市場を狙う。サンがSolarisを「.comグレードのOS」と強調すれば,マイクロソフトも日米の発表会のイベントで大規模なEコマースのデモを見せた(3月号pp.11-12レポート)。この分野では,Solarisが実績で上回るが,マイクロソフトもWindows 2000で激しく追い上げる。Eコマースで最も重要になるのは,拡張性と高可用性だ。予測不能なアクセスの急増があり,しかも一瞬のシステム・ダウンがビジネス機会の大きな損失につながるためである。
拡張性と可用性はSolarisがリード
サンは3月6日のSolaris 8の発表会で,この2点を強くアピールした。たとえば拡張性の点では,すでにSolaris 7で64ビット化したほか,128CPUのマルチプロセッサまで対応する。
可用性については,4ノードのクラスタ構成を採れるほか,システムの稼働中に,CPUボードなどを追加できる動的再構成や,OSの新版をインストールできるライブアップグレードなどの機能を提供する。障害による停止だけでなく,計画的な停止時間も最小限にとどめられるという。
MSはDatacenter Serverで対抗
これらサンが主張する項目について,Windows 2000は明らかに分が悪い。そこで焦点になるのは,今年半ばに出荷予定のWindows 2000 Datacenter Serverで,どこまで追いつけるかだろう。Datacenter Serverは,最大32CPU,64Gバイト・メモリーをサポートするほか,4台のクラスタ構成が採れる。最大CPU数などは依然,Solarisに水をあけられているが,実システムへの適用を考えれば同じ土俵で戦えるようになるだろう。
すでに,マイクロソフトは3月8日,日本ユニシスと提携。Pentium III Xeonを最大32個まで搭載可能なES7000に,Datacenter Serverを載せて共同で販売していくことを発表した(p.27ニュース参照)。発表会で両社は,ES7000とDatacenter Serverの組み合わせで,インターネット・データセンター分野やハイエンドUNIX機が採用されていたミッション・クリティカルな大規模基幹システム分野を攻めていくことを強調した。
これに先立ち米Microsoftは, Datacenter Serverの導入推進策として「Windows Datacenter Program」を発表した。サーバー・ベンダーと共同で,サーバーの認定テストを実施したり,サポートを提供する。機種を絞り込み,厳しいテストを課して可用性を確保するとともに,障害に迅速に対応する狙いだ(pp.11-12レポート参照)。日本からはNEC,日立製作所,富士通が参加を表明している。
Windows 2000の強みは,システムのコスト・パフォーマンスの高さだ。Windows 2000発売のイベントでもBill Gates会長がTPCのベンチマーク結果を引いて,その点を強調した。Compaqの8CPU機ProLiant8500×12台に,Windows 2000 Advanced ServerとSQL Server 2000を載せて20万7079tpmC(トランザクション/分)を記録,しかもトランザクション当たりのコストも19.12ドルである。
一方,サンのEnterprise 10000(64CPU)のTPC値は11万5389tpmCで,コストも105ドル/tpmCとなっている。単純には比較できないが,コストではWindows 2000に軍配が上がる。日本ユニシスも「ES7000を使えばハイエンドUNIX機に比べ1/4以下の価格でシステムを構築できる」(鷲尾武取締役)としている。
ただしOS単体の価格では,サンはSolaris 8について8CPUまでは無償提供する,という思い切った策に出た(別掲記事)。これにはインテル版も含まれている。Linux対抗の意味合いが強いが,Windows 2000の販売にも影響はあるだろう。
NTは中小規模のサーバーOSとして確固たる地位を築いたことは間違いない。その勢いを駆って,マイクロソフトはWindows 2000でハイエンドUNIX機の牙城を切り崩しにかかっている。だがその壁は厚い。本格的な64ビットOS時代を迎える前に,どこまで食い込めるか。Windows 2000 Datacenter Serverはその意味で重要な製品になる。
「10年の実績がSolarisの強み」
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答 最大の強化点は可用性の向上だ。動的再構成やライブアップグレードによって可用性は99.999%に近づいた。細かな点では,メモリー再配置の機能を見直し,小さなメモリー・リークも検出できるようにした。NTユーザーは今だに,週単位のダウンや毎日のリブートの心配をしている。
――MicrosoftもWindows 2000で高可用性を高めたと主張しているが。
答 Solarisは10年の積み重ねがある。この業界では経験は大きな強みになる。それに対し,MicrosoftはWindows 2000で大きくコードを書き換え,しかも3500万行にも及ぶ。たぶん安定するまでに時間がかかるだろう。
――競合OSとして意識しているのは。
答 Windows,Linux,HPをはじめ他のUNIX,OS/390,これらすべてが競争相手だ。インターネット分野ではActive Directoryを持つMicrosoftが有力なので,SunはiPlanet社と協力して対抗していく。iPlanetのDirectory Serverで管理できるオブジェクト数は現在2000万だが,それを1億に拡張して優位に立つ。
――GUIの部分はWindowsに比べ見劣りするのでは。
答 確かにユーザー・インターフェースの分野はMicrosoftがリーダーだ。Solaris 8でインストールのところは追いついたが,管理の部分はまだ積み残したところが多い。
――Solaris 8のソースを公開し,8CPUまでのライセンスを無償にしたのは,Linuxに対抗するためか。
答 Linuxに触発されたのは確かだ。しかしそれだけではない。市場自体が変化してきている。サーバーのコモデティ化が進んでおり,それに対応して導入しやすくした。無償化はWindowsのシェアにも影響を与えるだろう。SunはLinuxとは互換性をとりながら共存していく。
――OSを無償にし,Sunはどこで利益を上げるのか。
答 SPARC搭載機を売るのがSunの本業である。特に,8CPU超の市場はSunが最も強い分野だ。PCサーバーでSolarisを使う場合でも,iPlanetやクラスタ・ソフトあるいはサービスなど,付加価値で収益を上げられる。
――次期版の開発計画は。
答 Solaris 9では引き続き,可用性と拡張性を強化する。投入時期はItaniumとUltraSPARC IIIの出荷をにらみながら決めていく。