Windows 2000の出荷が始まったが,ほぼ同時に「6万3000のバグが積み残されたまま」という報道があり,その真偽がユーザーには気になるところだ。また,インターネット上では,次期版の開発計画変更の話題もかけめぐっている。このほど来日した米MicrosoftのWindows 2000 Project ManagerであるIain McDonald氏と,Business Enterprise部門のGroup Product ManagerのAubrey Edwards氏に,Windows 2000のバグ問題の真相と今後の開発計画を聞いた。

Iain McDonald氏

――NT 5.0(Windows 2000)は当初,98年末の出荷を予定していたはずだ。ここまで遅れたのはなぜか。

McDonald(以下M) 早く出して品質を犠牲にすることだけは避けたかったからだ。MicrosoftはWindows 2000に企業生命を賭けた。Windows 2000はユーザーが期待していた以上の品質の製品を出せたと自負している。98年末の時点ではまったく無理だった。正直言って,製品候補版のRC1を7月に出したところで,「これならば行ける」という確信を持てた。

Edwards(以下E) Windows 2000の品質の高さはお客様の声が証明している。すでに,Dell.comやCBS MarketWatch,BURNS&NOBLEなどのサイトでWindows 2000が使われている。

――OSのカーネル部分はどのような点を強化したのか。

M 大きなところではメモリー管理を強化した。システムがどう動くかにかかわる重要な部分だ。たとえば,カーネル・モード・ドライバの信頼性を向上させている。これによって,メモリーが少なくなってきたときに不安定になる問題を解消した。

 プラグ&プレイのサポートも大きい。NT 4.0の弱点だったところであり,大きく改善した。

Aubrey Edwards氏

――米Ziff-Davisが「Microsoftの社内メモによればWindows 2000の製品版には6万3000個のバグがある」と報道していたが,本当にそれだけのバグが残っているのか。

M メモの存在は事実だが,報道は不正確だ。6万3000というのはバグの数ではない。プレフィックスというツールを使ってコードを診断したのだが,これはいわば文法チェックをするもので,疑わしい個所を片っ端からレポートする。そのあとで,人間が本当に不具合なのかを判断するわけだ。ツールが洗い出した個所が6万3000個あったが,それらをカテゴリ分けし,問題になりそうな点はすでに修正した。

 特にセキュリティに関しては重要だと認識している。どのような問題があり,どう修正したらよいのかを,Windows Updateのサイトの方ですでに公開している。セキュリティについては情報を開示することが大切であり,決して隠してはならないと考えている。

 実は内部メモは,プログラマ達に危機感を持たせ,より働いてもらうためのものだった。外部に漏れてしまったのは残念だ。

図1●MicrosoftのOS製品計画(一部本誌推定)

――Microsoftは正式にWindows 2000 Professionalの次期版の開発計画を修正したのか。

M そうだ。従来,Windows NTカーネルを採用したWindows 2000の次期版として,一般消費者向けのNeptune(開発コード)と,企業向けのOdyssey(開発コード)という2つのOSを開発してきた。それを1本化し,Whistler(ウィスラ:開発コード)として開発している(図1[拡大表示])。ただしWhistlerのパッケージは,1種類にすべきか,あるいは企業ユーザー向けと一般消費者向けの2つに分けた方がよいのかは検討中だ。

 Whistlerは2つの点で重要な意味を持つ。1つはNTのコードを一般消費者向けに提供するということ。Windows 98よりも信頼性と拡張性の点で明らかに優れているので,ぜひ移行してほしい。もう1つは,今後1年くらいの間にユーザーがWindows 2000 Professionalを展開していく過程で出てくる問題を,解決するOSになるという点だ。

――Windows 2000 Serverの今後の開発計画は。

M 2000 Serverについては今後2年間,大きな変更を加えるつもりはない。ゆっくりとした,しかし着実な改善を施していく。言うなれば「革新」ではなく「進化」だ。Microsoft社内ではいくつかの重要なプロジェクトが走っている。その中の1つが次世代Windowsサービスと呼ばれるものだ。これはOSの外のサービス部分をもっと充実させようという試みである。6カ月後くらいにもっと詳しく話せると思うが,今はこれ以上話せない。

――今後,新機能はどういう形で提供していくのか。

M 新機能をService Packとして提供していく形態は最悪だった。今後はWindows Updateのような形で提供していく。2~3カ月中にIPv6のプロトコル・スタックを提供するつもりだ。

――Windows 2000 Datacenter Serverはスケジュール通り開発が進んでいるのか。

M 今年半ばのリリースを目指し, ほぼスケジュール通り開発中だ。Datacenter Serverは,信頼性を確保するため,かなり厳しいハードの互換性テストを実施している。

E Microsoftは2月にWindows Datacenter Programを発表した。ミッション・クリティカルな大規模システムでWindows 2000 Datacenter Serverを利用するためには,サポートの体制作りが重要になる。ネットワーク・カードなどハードの単体テストだけでなく,システム全体をテストすることも大切だ。サポートについては,ベンダーによる責任のなすり合いを避け,OEMパートナとMicrosoftで解決する。米国のCompaq,Dell,HP,Unisysと,日本のNEC,日立製作所,富士通の合計12社がプログラムへの参加を表明している。

――64ビット版は本当に年内に出荷できるのか。

M Windows 2000の64ビット版はIntelとの密接な協力関係のもと,開発を進めている。この開発には,NT開発チームのリーダーだったDavid Cutler氏も1年半ほど前から参画している。最初のリリースは開発者向け版になる。なぜなら,アプリケーションが出てこないと,意味がないからだ。Itaniumの出荷に合わせて提供する。

E この2月に,Intel Developer Forumで,CompaqやDell,NECなど8つのベンダーが,Itanium搭載システムで64ビット版Windows 2000を動かすデモを行っており,心配ない。

(聞き手は桔梗原富夫)