トレーニング・コースの最後に受験
RHCE試験は前提条件なしに受験できるが,大多数の受験者はその前にレッドハットのトレーニング・コースを受講している。RHCE試験が難しいからだ。トレーニングを受けずにRHCEに合格できる人は,UNIX/Linuxに関して相当の技術の持ち主だろう。
レッドハットが運営しているトレーニング・コースは二つの体系に分かれている。UNIX/Linuxの操作に慣れた経験者向けのRHCE速習エキスパートコース(講座番号:RH300)は5日間で,4日間の講習後,最終日にRHCE試験が組み込まれている(コース費用は33万円で,RHCE試験費用の9万円を含む)。
最近この経験者コースを実際に受講してRHCEを取得した友人に聞いたところ,難易度がかなり高かったという。レッドハットのWebサイトでも「本コースは難解です。実務としてシステム管理を経験している方や,UNIX(あるいはLinux)のパワーユーザーである方を対象としています」と注意を促しているほどだ。
トレーニング・コースのもう一つの体系は,4日間の標準コースである。IT技術者向け総合トレーニング・コース(講座番号:RH033),システム管理コース(RH133),ネットワーク・サーバーの構築およびセキュリティ管理コース(RH253)と,難易度別に三つが用意されている(費用は各24万円)。各コースの講座番号は,大きいほど難易度が高いことを表している。RH033はGUIの経験しかないユーザーが対象で,ファイル・システム,マルチタスク,ユーザー管理などの概念を説明する。RH133ではカーネルの再コンパイルやユーザー権限の設定など,RH253ではWeb,メール,FTP,DNSなどのサーバー・アプリケーションの設定方法を解説する。これらの標準コースでは,最終日に,後述するRHCE試験のSection2に相当する選択式試験(1時間)が行われる。合格すると,RH033では「RHAP Bronze」,RH133では「RHAP Silver」,RH253では「RHAP Gold」という,RHAP(Red Hat Accredited Professional)資格が与えられる。ただしRHAPは日本独自の資格である。
標準コースにはRHCEの試験が組み込まれていない。RHCEを取得するには,別途RHCE認定試験(RH302)を受験する必要がある。ただし,RH033やRH133を修了しただけでは,合格は難しいだろう。
試験は三つのセクションからなる
RHCEの認定試験はSection1からSection3までの三つのセクションに分かれている。単なる記述問題に答えるだけでなく,Linuxマシンを前にした設定作業や管理技術も試される。
Section1はトラブル・シューティングがテーマの実技試験で,試験時間は2時間30分。ファイル・システムやシステムの起動に関するトラブルが発生している実機が与えられ,受験者は自分で障害を見つけ,復旧する。例えば,電源投入後の起動シーケンスの途中でカーネル・パニックを起こしているマシンを正常に起動するように修復する課題などが与えられる。
Section2は選択式の試験である(サンプル問題を参照)。知識を問う設問がPC上に表示され,示された選択肢から正しい答えを選ぶもの。試験時間は1時間である。
Section3はサーバー構築の実技試験。Section1と同様に実機が与えられ,Linuxのインストール,ユーザー・アカウントの設定,パーミッション(ユーザー権限)の設定,指定された条件を満たすように設定を変更してのカーネルの再コンパイル,Webやメールなど複数のサーバー・アプリケーションの設定,ファイアウォールなどセキュリティの設定などを,2時間30分の試験時間内ですべて行う。
以上,合計6時間の試験はかなりハードで,受験に当たっては健康管理も重要な要素になるだろう。各セクションは100点満点。全体で240点以上の点数を獲得し,かつ50点以下のセクションが一つもないことが合格の条件だ。
RHCEに合格すると,まず電子メールでその旨が伝えられ,8~10週間以内に認定証とロゴがプリントされたTシャツが送られてくる。ほかのベンダー系資格と同様に,名刺にロゴを入れることも可能になり,名刺に貼るロゴシールなども配布される。
さらに,米Red Hatが運営し,Linux関連の最新ニュースを提供している「Certification Central」というWebサイトにログインする権利が与えられる。米国では,RHCE有資格者を求める企業へのあっせんもある。