ワープロ検定は運転免許,情報処理技術者に次いで知名度の高い資格だ。えっ,ワープロ?という読者もいるかもしれない。機材を持ち込むことが可能な試験会場が多く,歴史的にワープロ専用機を持ち込む受験者が多かったものの,すでにそれは昔のことであって,今ではノートPCとWordや一太郎を使う受験者が多いという。システム開発やプログラミングにかかわる者にとっては,キーボードを使い,速く,正確に文字を入力する能力は不可欠だから,意外とソフトウエア業界関係者にも縁があるのではなかろうか。

 このワープロ検定の正式な名称は「日本語文書処理技能検定試験」といい,日本商工会議所(日商)が全国の商工会議所に委託する形で試験が実施される([拡大表示])。日商では略称を平成14年度から「日商文書技能」に変更したが,以前は「ワープロ技能」と称していた。そのため,日商ワープロ検定あるいは単にワープロ検定という名のほうが有名だ。

「入力」試験が最大の関門

 ワープロ検定は意外に歴史が浅く,第1回試験は昭和60年に実施された。以後,1級から4級までの級に分けて実施されていた。今年からは4級を廃止して,1級から3級までが行われる。3級は全国の商工会議所で随時試験が行われるのに対して,2級は5月と10月に,1級は10月だけと上級になるほど受験機会が少なくなる。そのため,私の友人でも1級受験者は試験日を目指して日々キーボードで文書を作成する訓練を積んでいたことが多かった。というのは,ワープロ検定では実技試験「入力」という最大の関門があるからだ。例えば,1級の「入力」試験では10分間に800文字を入力し,そのうち1パーセントに相当する8文字しか誤字が許されない。つまり,句読点を含む正答入力文字数が792字以上でなければならないからだ。言ってみれば,この「入力」で足切りがあるようなもの。さらに,もう一つの実技試験である「ビジネス文書」は45分でA4サイズ2枚以内の文書を作成しなければならないが,試験内容がおおよそのところで文章でしか示されていない。例えば「来週の水曜日に行う慰安会の案内」というように,おおまかな指示しかなされない。

 試しに,1級「ビジネス文書問題」[拡大表示]を見ていただきたい。問題文を理解し,自分なりにうまく文書として表現しなければならないことがわかる。出席者や配布者,場所などの固有名詞は特に正確に読みとって,誤字がないようにしなければならない。それを手助けするためか,この「ビジネス文書」では事前入力方式といって受験者に配布された資料を各自フロッピ・ディスクに入力し,試験会場に持参する方式が採られている。これを甘くみると大変で,多くの受験者はバックアップも含めて2枚,3枚と持参する。このように,最高峰の1級に合格することはかなり大変である。合格率はおおよそ10%台だ。10%台といっても,受験者が猛者ぞろいであることを考えればかなりの難関であることがわかるだろう。