プログラミング書籍を出している代表的な出版社に「2002年に売れ行きが期待はずれだった本は?」と聞いて,一番多かった答えは「 .NETの本」であった。米Microsoftは2002年3月に,日本法人のマイクロソフトは4月にVisual Studio .NET(VS .NET)の出荷を始めたが,.NETが爆発的に広がることはなかった。
しかし .NETの開発は広まるだろう。(1)Windowsは今後も使われる,(2)JavaでWindowsらしいアプリケーションを作るのは難しい,(3)Microsoftには .NETの方針を当面大きく変更する動きがない――からだ。と考え,やっぱり .NET系のスキルを磨いておこう!と思って書籍を見ると,売れ行きはともかく2002年は大豊作の年であった。出版点数の多さはJavaに続くレベルだし,質が高く,今後数年間読み続けられそうな大著も現れた。優れた本が入手可能になった2003年から .NETを始めるのが,ちょうどいいかもしれない。
Microsoft Pressの本は
シリーズごとに整理しよう
.NETの本を選ぶときは「Microsoft Press」を知っておくべきだろう。Microsoft Pressは米Microsoftの出版部門で,日本語版はアスキーと日経BPソフトプレスが発行している。
日経BPソフトプレスは2001年に3点,2002年に20点以上の .NET関連書籍を出した。2002年に出たものは,内容の充実度,わかりやすさともに大きく進歩しており,.NETの本を求める場合には一通り検討する価値がある。
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表1●Microsoft Pressの書籍の「シリーズ名」。○は1冊あることを,○○は2冊セットで発行されていることを示す |
「ステップバイステップで学ぶ××実践講座」は手順中心でなるべく分量を少なくしたチュートリアル,「プログラミング××」は厚くなってもいいから充実した説明をしようと試みた本,「××によるプログラミングWindows」はCharles Petzold(チャールズ・ペゾルド)氏が執筆した本,「××ランゲージリファレンス」はプログラミング言語のリファレンス・マニュアルだ。
××ランゲージリファレンスは,MSDNライブラリに入っている解説を紙にしたものなので,どうしても紙の本で読みたい,と思う人以外は購入する必要はないと思う。ただ,他の本は,一冊ごとに著者の個性と自負が反映された,本らしい本に仕上がっている。たとえば,「ステップバイステップで学ぶVisual Basic .NET実践講座」と「同Visual C#実践講座」では著者も内容構成もページ数も語り口も違うので,片方が気に入ったからといって,もう一方も気に入るとは限らない。
例外と言えるのがペゾルド氏の2冊だ。彼は最初に「Microsoft Visual C# .NETによるプログラミングMicrosoft Windows」を書き,続いてその本をVBプログラマ向けに書き直した「Microsoft Visual Basic .NETによるプログラミングMicrosoft Windows」を出した。この二つは兄弟本であり,好みの言語によって一方を選択すればよい。
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Visual Basic .NET入門 基礎編 笠原 一浩,山本 美孝,山崎 秀 著 ソフトバンクパブリッシング 発行 2002年5月 301ページ+CD-ROM+DVD-ROM 2800円(本体) bk1で購入する |
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一週間でマスターする Visual Basic .NET 藤本 壱 著 毎日コミュニケーションズ 発行 2002年8月 319ページ+CD-ROM+DVD-ROM 2600円(本体) bk1で購入する |
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Visual Basic .NET プログラミングマニュアル 山崎 明子,吉松 史彰 著 技術評論社 発行 2002年9月 439ページ 2680円(本体) bk1で購入する |
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プログラミング Microsoft Visual Basic .NET Vol.1基礎編, Vol.2活用編 Francesco Balena 著 ドキュメントシステム 訳 日経BPソフトプレス 発行 2002年9月 789ページ+CD-ROM, 953ページ+CD-ROM 6800円,7800円(本体) Vol.1 bk1で購入する Vol.2 bk1で購入する |
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Microsoft Visual Basic .NETによる プログラミングMicrosoft Windows 上,下 Charles Petzold 著 日経BPソフトプレス 編 日経BPソフトプレス 発行 2002年12月 771ページ+CD-ROM,611ページ+CD-ROM 5500円,5200円(本体) 上 bk1で購入する 下 bk1で購入する |
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Visual Basic .NET 実践技&上級技大全 C&R研究所 著 ナツメ社 発行 2002年11月 287ページ+CD-ROM 2500円(本体) bk1で購入する |
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DirectX+VB .NETではじめる ゲームプログラミング 藤田 伸二 著 翔泳社 発行 2002年5月 350ページ+CD-ROM 2800円(本体) bk1で購入する |
フルカラーでかわいい入門書
まず,プログラミング経験があまりない人をターゲットとしたVisual Basic .NET(VB .NET)の入門書を二つ取り上げよう。「Visual Basic .NET入門基礎編」は実に商品力のある入門書だ。まず,全ページがカラー印刷なのがすごい。ワープロや表計算ソフトの本では当たり前になったカラー印刷だが,プログラミングの本ではこれ以前にあったろうか。表紙の人形は「ウランちゃんとタントくん」というらしいが,キャラクターを作り,人形を作って写真を撮影し,イラストを描くというのはプログラミング本らしくない力の入れ様である。VS .NET Professional60日間限定評価版のDVD-ROMと,サンプル・コードやサンプル作成に使う画像ファイルなどが入ったCD-ROMが付き,価格は2800円に抑えられている。書かれている内容もよい。球の体積の計算,ビデオ・テープに録画するときに標準モードと3倍モードをどう使えばいいかをアドバイスしてくれるプログラム,うるう年の判定,鶴亀算,画像を使ったじゃんけんなど,サンプルがよく考えられている。一つひとつのサンプルが短く,それがたくさんあるのも良い。ファイル入出力がないなど,カバー範囲は広いとは言えないが,最初の一冊はこれでいいと思う。急いで難しいことを習得しようとしてつまずくより,とにかく本の最後までたどりついて満足することが望ましいからだ。
「一週間でマスターするVisual Basic .NET」も,同様にフルカラーでDVD-ROMとCD-ROMを付けてきた。キャラクターのイラストこそないが,デザインでうまく色を活用しているし,画面写真が大きくてとても見やすい。月曜から日曜までの7章に分けており,水曜から土曜はテキスト・エディタの作成で,ツールバー,メニュー,コモンダイアログによるフォントと書式の変更,ファイルの読み書きをカバーする。最後の日曜日は配布だ。実用的なテクニックをストレートな方法で提示している。
VBの「ペゾルド本」も出た
VBの経験があって,VB .NETを始めようというなら次の3冊が良いだろう。「Visual Basic .NETプログラミングマニュアル」は,入門書らしく,VBをインストールして,フォームにボタンを貼り付けて,そのイベント・ハンドラにMessageBoxクラスのShowメソッドを書くところから始まる。その後は,文法,オブジェクト指向,Windows Forms,Webアプリケーション(ASP .NET),ファイル入出力,ネットワーク(HTTP,SMTP,ソケット),XML,データベースという構成だ。Windows Formsには122ページを割いているが,ほかの説明は「つまみ食い」的である。VB経験者は,このつまみ食いによって,VB .NETに向き合う際に目を配るべき範囲がどこなのかを手早く理解できることだろう。
「プログラミングMicrosoft Visual Basic .NET」の著者Francesco Balena(フランチェスコ・バレナ)氏は「プログラミングMicrosoft Visual Basic 6.0」(日経BPソフトプレス発行,1999年11月)の著者でもある。新しいVB .NETの本は,Vol.1に基礎,オブジェクト指向,.NET Frameworkという三つの部が,Vol.2にWin32アプリケーション,データベース,インターネットという三つの部がある。カバーすべき範囲を落とすことなく,なおかつ「新しい .NETプラットフォームの機能を完全に活用したいと思っているVisual Basic 6の熟練開発者を対象としています」という言葉のとおり,ほどよく細かい解説を繰り広げている。
「Microsoft Visual Basic .NETによるプログラミングMicrosoft Windows」の著者ペゾルド氏は,「プログラミングWindows第5版」(アスキー発行,2000年10月)でおなじみなライターだ。伝統的なC言語とWindows APIを使ったプログラミングの解説書として,高い評価を得ている本である。そのペゾルド氏はこのVB .NETに関する書物で,Windows Formsを使ったプログラミングを詳細に調べ,得られた知見を明らかにしている。通常の範囲でVBを使うだけなら,ここまでの理解は必要ないかもしれない。しかし,Windowsアプリケーションを書く力を確かなものにしたい,優れたものにしたいというなら,この本が一番の早道だと思われる。
VB .NETについては本のバリエーションも広がっている。「Visual Basic .NET実践技&上級技大全」のようなティップス集(テクニック集)が出始めた。VBでどんなことができるのかを流し読みして本棚に置いておくだけで,いざというときに本の存在を思い出せるかもしれない。困ったときにパラパラやってみるにもよい。
「DirectX+VB .NETではじめるゲームプログラミング」も面白い。「DirectX7 for Visual Basicはじめるゲームプログラミング」(翔泳社発行,1999年11月)という本を加筆し改訂したものだ。DirectXは機能アップが毎年のように行われるので付いていくのが大変だが,技術が落ち着いてから始めようとしたら,いつまでも始められない。やりたいことがあるならとりあえず始めてみる,という気持ちが大切だ。
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新プログラミング環境 C#がわかる+使える 川俣 晶 著 技術評論社 発行 2002年6月 351ページ 2380円(本体) bk1で購入する |
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ステップバイステップで学ぶ Microsoft Visual C++ .NET実践講座 Vol.1基礎編,Vol.2活用編 Julian Templeman,Andy Olsen 著 クイープ 訳 日経BPソフトプレス 発行 2002年6月 350ページ+CD-ROM, 402ページ+CD-ROM 2480円,2480円(本体) Vol.1 bk1で購入する Vol.2 bk1で購入する |
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プログラミング Microsoft Visual C++ .NET Vol.1基礎編,Vol.2活用編 George Shepherd 著 トップスタジオ 訳 日経BPソフトプレス 発行 2002年12月 618ページ+CD-ROM, 525ページ+CD-ROM 5200円,4800円(本体) Vol.1 bk1で購入する Vol.2 bk1で購入する |
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Visual C++ 逆引き大全500の極意 住吉 乱 著 秀和システム 発行 2002年7月 570ページ+CD-ROM 2400円(本体) bk1で購入する |
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DirectX8 & VC++ 3Dの基礎とゲームの作り方 田中 成典 監修 第一I/O編集部 編 工学社 発行 2002年8月 383ページ 2500円(本体) bk1で購入する |
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Visual C# .NETによる 基本データベース プログラミング 谷尻 豊寿 監修 谷尻 かおり 著 技術評論社 発行 2002年7月 271ページ+CD-ROM 2580円(本体) bk1で購入する |
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ASP .NET実践 醍醐 竜一 著 技術評論社 発行 2002年10月 255ページ 2180円(本体) bk1で購入する |
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ASP .NET 実践プログラミング 佐藤 親一 著 オーム社 発行 2002年11月 398ページ 2400円(本体) bk1で購入する |
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プログラミング Microsoft .NET Framework Jeffrey Richter 著 吉松 史彰 監訳 日経BPソフトプレス 発行 2002年7月 594ページ 5800円(本体) bk1で購入する |
VC#のオススメ書籍はVBと共通
VBの次はVisual C#(VC#)を取り上げよう。とは言うものの,VC#の本としてオススメしたい書籍のいくつかは,実はすでに紹介してしまったようなものだ。前述した「Visual Basic .NET入門基礎編」のVC#版として「Visual C# .NET入門基礎編」(笠原 一浩,山本 美孝,山崎 秀著,ソフトバンクパブリッシング発行,2002年7月)がある。「Visual Basic .NETプログラミングマニュアル」のVC#版が「Visual C# .NETプログラミングマニュアル」(吉松史彰,山崎明子著,技術評論社発行,2002年9月)だ。ペゾルド氏のVC#本についてもすでに触れた。ただ,この3冊にはC#言語の文法解説がほとんどない。「新プログラミング環境C#がわかる+使える」はそこを補ってくれる本だ。著者がC#に興味を持ち,短いコードを書きながらC#の姿に迫っていく。プログラミング,ライティングのベテランだけあって,サンプル・コードの切れ味が良い。一つひとつのサンプルで,言いたいことがはっきりしている。C#を使う必要があるなら,そしてC#で妙なコードを書いて後で悩むのが嫌なら,とりあえずこの本を読んでみるとよいだろう。
VC++ .NETの面白さに驚く
VBの仕様変更,VC#の登場に目を奪われて,Visual C++ .NET(VC++ .NET)にはあまり注意が向けられていないように思う。VC++ .NETについての本も,VB .NETとVC# .NETに比べると少ない。
ところが「ステップバイステップで学ぶMicrosoft Visual C++ .NET実践講座」を読むと,VC++ .NETが新しくなっていることがよくわかる。この入門書には従来のVC++では重要だったMFC(Microsoft Foundation Classes)とATL(Active Template Library)の使い方は出てこない。その代わりに,Windows Forms,GDI+,System.IO名前空間を使ったファイル入出力,XML操作,ADO .NET,Webサービスの作り方などが書かれているのだ。これからVC++ .NETを使うということがどういうことなのかを教えてくれる本である。今 .NETより前のVC++を使っている人は,ぜひ読んでみるべきだ。
「プログラミングMicrosoft Visual C++ .NET」の方は,よりトラディショナルな構成を採っている。MFC,GDI,ActiveX,ドキュメント/ビュー,ATL,COMといった話題がしっかり載っていて,「.NET対応アプリケーションの開発」は最後の第6部にまとめられている。VC++ .NETが出たとは言え,これまでと同様の方法で開発するニーズがまだまだ大きいのが現実だ。仕事でVC++を使う,もしくはこれから使おうという人には,この本が頼りになるに違いない。
「Visual C++逆引き大全500の極意」は変わった本である。体裁はティップス集なのだが,初めてVC++を触る人にWinMain関数とWindows APIでWindowsアプリケーションを書く方法を教える入門書で,なるべく通読すべき本だと私には思える。操作説明ではVC++ 6.0とVC++ .NETの両方の画面が並んでいる。ゲームを作るならWinMain関数という基本に戻るべきだということなら話はわかる。「DirectX8 & VC++ 3Dの基礎とゲームの作り方」も,やはりWinMainを使うタイプだ。この辺,実はけっこう根強い需要があるのではないか。
ADO .NET,ASP .NETは
言語がどちらであるかに注意
.NETでデータベースを利用するときのプログラミング・インタフェースであるADO .NETに関しては,「Visual C# .NETによる基本データベースプログラミング」を推薦したい。AccessのMDBファイルを使ったデータベース・アプリケーションを作り,VS .NETのProfessional以上に付属するCrystal Reportsで印刷をするところまでを,要領よく解説したチュートリアルだ。ただ,掲載されているコードはVC#だ。VBでもVC#でもクラスライブラリは同じなのだからVBに書き換えるのはもちろん可能なのだが,VBユーザーには少し面倒だ。
Webアプリケーションを作成するASP .NETの書籍には,「ASP .NET実践」と「ASP .NET実践プログラミング」がある。前者の言語はVC#,後者はVBだ。
最後に,.NET Frameworkについて詳細を記した「プログラミング Microsoft .NET Framework」を紹介しよう。著者のJeffrey Richter(ジェフリー・リッチャー)氏は「Advanced Windows改訂第4版」(アスキー発行,2001年5月)の著者で,プログラマ向けにWindowsの中身を書かせたら第一級である。