Webプログラミングには,独特の難しさがあります。難しさの大半は,WebブラウザとWebサーバーが,HTTP(Hypertext Transfer Protocol)というプロトコルを介して協調動作するところにあります。クライアント/サーバー型のネットワーク・プログラミングと同様に,システムの構成要素が多いため,仕組みをちゃんと理解していないと不具合の原因を追及するのは大変です。またHTTPというプロトコルは,複数の画面にまたがってブラウザとWebサーバー間のセッションを保持できないため,このセッションを維持するための技術も必要です。
でも,なんらかのプログラミング経験さえあれば,Webプログラミングを基本から学べる書籍がちゃんとあります。トラブルに強くなれるWebプログラミング書籍5冊を紹介します。
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これからはじめる Perl&CGI入門ゼミナール 平田 豊 著 ソーテック社 発行 2002年3月 415ページ 2280円(本体) bk1で購入する |
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プログラミングPerl第3版 VOLUME1,2 Larry Wall,Tom Christiansen, Jon Orwant 著 近藤 嘉雪 訳 オライリー・ジャパン 発行 2002年9月 計1303ページ 5300円,4700円(本体) VOLUME1 bk1で購入する VOLUME2 bk1で購入する |
まずはCGIからはじめよう
最初に紹介する「これからはじめるPerl&CGI入門ゼミナール」は,習得が簡単で人気があるWebプログラミング環境のCGI(Common Gateway Interface)とPerlの基本を,実際に手を動かしながら学べる1冊です。本書は,まずCGIとPerlの動作環境を自宅のパソコン上に構築するところから始まります。作ったプログラムをサーバーにFTP(File Transfer Protocol)で転送する方法や,パーミッションの設定方法など,Webサーバーの基本から,画面キャプチャを多用してていねいに解説してくれます。
扱うプログラムのサンプルは,アクセス・カウンタ,メール送信,掲示板など,インターネットでよく見る一般的なものです。ひとまずWebプログラミングを体験してみたいが,プログラミングにはあまり自信がないという人にお薦めです。
基本を学んだ後に,Perlでのプログラミングが面白くなってきた,あるいはPerlをより深く学びたいと思うなら,ぜひ「プログラミングPerl 第3版」を手にとってください。著者の一人はPerlの開発者のLarry Wall氏で,この本はPerlの原点と言えるでしょう。2冊合わせて1万円と高価な本ですが,ていねいに,そしてジョーク満載で,Perlのプログラミングを楽しく解説してくれます。
本書は,Perlプログラミングの入門,Perlの言語仕様,標準Perlライブラリのリファレンス,デバックの手法,Perlで陥りがちなワナ,などPerlでプログラミングすることにまつわる多くのことがらをカバーしています。入門からリファレンスまで,長く利用できる書籍になるはずです。
本書を読み解くにあたっては,なんらかのプログラミング言語の経験が欲しいところです。その経験が,C,C++,JavaなどC言語系のもので,さらにいくらかのUNIXの経験があれば,より楽にPerlを理解できるでしょう。自分が欲しいちょっとしたプログラムをに書く時にPerlがとても向いていることがわかるころには,あなたはきっとPerlを好きになっているはずです。
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基礎からわかるサーバー・サイドJava 樋口研究室 著 日経オープンシステム 監修 日経BP社 発行 2001年7月 318ページ 3400円(本体) bk1で購入する |
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サーブレット&JSPではじめる Javaサーバサイドプログラミング 原田 洋子 著 技術評論社 発行 2001年3月 379ページ 2980円(本体) bk1で購入する |
Javaで取り組む人むけの2冊
Webプログラミングの環境は,何もCGIだけではありません。最近はJSP(JavaServer Pages)とサーブレットを組み合わせて構築したシステムも多く目にするようになってきました。フリーのWebサーバー・ソフトや,Javaサーブレット・コンテナの入手が容易になってきたこともあり,企業での利用だけではなく,個人ユーザーの利用も注目されています。サーバーサイドJavaを基礎から学べる2冊を紹介します。1冊目は「基礎からわかるサーバー・サイドJava」です。日経ソフトウエアの兄弟雑誌「日経システム構築」の連載を書籍にまとめたものです。Javaのアプリケーションを製作したことのある人が,サーバーサイドJavaを容易に学べる構成になっています。
具体的には,一つのJavaアプリケーションをまずサーブレットに改造し,サーブレットからJSP,JavaBeansを作り,という具合に,すでに備えている知識をサンプルを通して順次拡張していく形で,サーバーサイドJavaを実現するのに必要な技術を学んでいきます。その都度,その技術の仕組みも解説しているので,より深い理解の助 けになるでしょう。
サンプル・プログラムは,データベースに格納した社員情報を検索し,社員データを表示するといった,かなり実務に近いものです。また,本書の後半では,トランザクション処理が必要なシステムの構築に向くEJB(Enterprise JavaBeans)の詳細や,信頼性,性能の確保など,業務システムの開発にフォーカスした内容を扱っています。仕事でサーバーサイドJavaに取り組むプログラマのサーバーサイドJava入門書として,広くお薦めできます。
サーバーサイドJava,お薦め入門書の2冊目は,「サーブレット&JSPではじめるJavaサーバサイドプログラミング」です。Javaにある程度精通している読者を対象に,Javaサーブレットとは何かを一から解説しています。
サンプルで利用する開発環境は,WebサーバーApacheとサーブレット・コンテナTomcatです。簡単に設定方法も解説してくれますが,Linuxの知識があった方がよいでしょう。この設定さえ乗り越えてしまえば,おなじみ「Hello World」から始まる豊富なサンプル・プログラムを実際に試しながら,サーバーサイドJavaプログラミングを学んでいけます。本書の後半では,Perlで記述したCGIと,同じ結果を出力するJavaサーブレットを比較して,環境変数の取得の仕方を比較したり,複数のページにまたがるアプリケーションでセッション管理を実現するjavax.servlet.http.HttpSessionを詳しく解説しています。プログラマの視点でJavaを学ぶのと同じように,サーバーサイドJavaプログラミングを学びたい人には特にお薦めです。
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標準ASPテクニカルリファレンス 山田 祥寛 著 ソフトバンク パブリッシング 発行 2000年11月 547ページ 4000円(本体) bk1で購入する |
ASPを学ぶのにお薦めの1冊
Windowsになじみが深い読者なら,Webプログラミングの一歩として,ASP(Active Server Pages)に手を出してみるのもよいでしょう。「標準ASPテクニカルリファレンス」は,ASPを学びたい人にお薦めの1冊です。(1)基本的な機能の利用法,(2)アクセス・カウンタや広告のローテーション表示などを実現するコンポーネント,(3)スクリプトでコンポーネントを構築するための技術であるスクリプトレット,(4)データベースにアクセスするADOの利用法,(5)ASP上のプログラミング言語の一つであるVBScriptの基本構文や関数──など,ASPを利用するうえで知っていた方がいい技術を詳しく解説しています。
サンプル・プログラムも,学ぶ内容に合わせた長さの実用的なコードが,豊富に掲載されています。リファレンスとしての利用を想定してる本なので,最初から順番に学んでいけるという構成にはなっていませんが,パラパラとめくりながら気になるサンプルを試していけば,ASPでできることが増えていくはずです。
547ページと分厚い本ですが,総じてていねいにトピック一つひとつを説明しています。たとえばクライアントへの情報送信を管理するResponseオブジェクトの説明では,「クッキーに書き込みたい」,「キャッシュ/ページの有効期間を制御したい」というように,ニーズにあわせて解説とサンプルを説明してくれます。
Visual BasicやVisual C++など,なにかプログラミング言語の経験があれば,十分理解できる難易度と言えます。ところどころに設けられたコラムも,周辺技術を理解する参考になるはずです。
Visual Studio .NETに合わせて,ASP .NETという新しいASPがすでに利用できるようになっています。VBScriptが廃止され,Visual Basic .NETでコーディングするようになるなど,一見大きな変更があるように思えますが,ResponseオブジェクトなどASPの核となる技術はそう変わっていません。本書で得た知識は .NETの学習でも無駄にはならないでしょう。