Q 質問 社員の違法コピーを防ぐためにインベントリ管理ツールを導入したのですが,ツールで収集したクライアントPCのソフト情報が,実際にインストールされているソフトと合いません。原因と対策を教えて下さい。

A 回答 ツールだけで管理するのは限界があります。クライアントPCのレジストリなどを確認した上,運用で回避しましょう。


図1●インベントリ管理ツールの主なソフト・インストール情報取得方法
ライセンス管理を想定してアプリケーション・ソフトを一元管理する仕組みがWindowsにはない。そのため,他の用途で作られたアプリケーションのリストから,インストールされているソフトの情報を収集する
 インベントリ管理ツールは,クライアントPCに導入したエージェント・ソフトからPCの各種ハード/ソフト情報を集めて管理するソフトです。ただ,アプリケーション・ソフトのインストール情報に関する限り,誤った情報や紛らわしい情報を収集してしまうことがあります。

 その原因は単純です。クライアントPCのOSとして使われているWindowsにはアプリケーション・ソフトのインストール情報を一元的に管理する仕組みがないからです。そこで,管理ツールは他の用途で作られた情報源からインストール情報をかき集めます。その際,不整合が起きるのです。

レジストリ情報は記述がバラバラ

 主な情報源は2つあります(図1[拡大表示])。一つはWindowsのレジストリ情報です。「regedit」を起動して「HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows
\CurrentVersion\Uninstall」と辿ると,アプリケーションごとにフォルダが並んでいます。各フォルダの中には“DisplayName”という項目があり,ここにインストールされているソフトの名前が記載されています。もともと「アプリケーションの追加と削除」の画面に表示させる文字列ですが,インストール情報が最も体系立って並んでいるのでライセンス管理によく使われます。

図2●レジストリ情報をライセンス管理に使う場合の問題点
アプリケーション・ソフトの種類によりレジストリ“DisplayName”への記述方法が異なる。管理ツールによっては,誤った情報や紛らわしい情報が収集される可能性がある。また,ソフトのアンインストール後にレジストリ情報が“ゴミ”として残っていると,それまで取得してしまうことがある

 このレジストリ情報を使う場合,いくつか問題があります。

 まず,レジストリへの書き方がソフトによってバラバラです。多くのソフトはDisplayNameにソフト名を記載していますが,異なる複数のソフトに同じ名前を付けたり,一つのソフトで複数のDisplayNameを記述したりするものがあるのです(図2[拡大表示])。また,レジストリに情報を書き込まないソフトは,そもそも検出できません。

 上記に当てはまらないソフトでも,アンインストールする際に例えばexe(実行形式)ファイルが入ったフォルダを削除するだけだと,レジストリにソフト情報が“ゴミ”として残ってしまいます。この場合は,削除したはずのソフトの情報が収集されてしまいます。

市販ツールの工夫も完ぺきではない

 そこで管理ツールは,もう一つの情報源であるexeファイルの情報を取得することで精度を補強します。exeファイルはソフトの本体なので,レジストリ情報で見られたような不整合は起こりません。

図3●exeファイルをライセンス管理に使う場合の問題点

 ところが,これにも問題があります。まず,PCのドライブを全件検索すると処理に時間がかかります。数分以上かかるようでは,業務に支障を来すでしょう。また,大抵のアプリケーション・ソフトは複数のexeファイルを持っています。それを全部集めていると,収拾がつかなくなります(図3)。

 この問題に対して各ツールは「スタートメニューのショートカットにヒモ付けられているファイルなどに限定して検出する」(「ASSETSCAN」を開発するNECソフト),「ソフト名とexe名の対照表を用意しておき,そこに書かれたソフトのみを検出する」(「License Complete Lite」を開発する日本ユニシス)といった工夫を盛り込んでいます。これらにより現在市販されている管理ツールは精度がかなり高くなっていますが,100%正確な情報であることは保証できません。

収集後に運用で回避するのが現実的

 ツールで収集した情報とPCにインストールされているソフトが一致しないことが判明したら,当該PCでexeファイルが存在しているかどうかを確認した上で,レジストリ情報をチェックしてみます。原因が推定できたら,ソフトの情報を収集した後で,ExcelやDB上で実態に即すよう運用時にリストを加工するのが現実的でしょう。

(本誌)