Q 質問 新たに導入するサーバーにバックアップ機器の導入を考えています。機器を選ぶにあたって,どのメディアを選べばよいかを教えてください。

A 回答 バックアップすべきデータの容量と,バックアップに許される時間で選びます。


 まず最初にバックアップの意義を簡単に確認しておきましょう。ハードウエア障害によって起こるデータの損失に対しては,RAID(Redundant Array of Inexpensive Disk)などハードウエアの冗長化で対応すべきです。しかし,例えば管理者が誤ってデータを削除してしまうなどのオペレーション・ミスの場合,ハードウエアをいくら多重化しても意味がありません。こうした場合に備えてバックアップを行っておき,いざというときに過去に保存したデータを戻します。

 バックアップ機器の導入においては,まず,何日前のデータに戻せればよいかを決めます。これは,バックアップするデータの重要度や更新頻度によります。

機器選択のポイントは3つ

図1●バックアップ機器を選択するためのポイント
大きく3つある。(1)データの容量,(2)バックアップに費やすことのできる時間,(3)システムに許されるダウン・タイム――である。これらのパラメータと,バックアップ機器の容量,転送速度をマッチングさせる

 バックアップの頻度を決めたら,次に,(1)バックアップするデータの容量,(2)バックアップに費やすことのできる時間,(3)システムに許されるダウンタイム――を明らかにします(図1[拡大表示])。これが分かれば,必要な機器のスペックが決まります。バックアップ機器のスペックは,その規格の種類によってほぼ決まるため,図1は実質的には規格を選ぶ作業になります。

 (1)を決めるポイントは,他で代用できないデータを選別することです。例えば,OSのデータはCD-ROMを用いてインストールし直すことができますが,ユーザーが作成したファイルや売り上げデータを失えば,代わりになるものはありません。このようなデータは,運用中に増えていくため,増加率を見積もって容量を決定します。  (2)と(3)はバックアップの時間に関連する項目で,一見似ているように見えますが,分けて考える必要があります。(2)は通常運用時にバックアップに費やせる時間です。例えば,RDBMSなど夜間バッチを実行していて,バッチ終了後のデータをバックアップしたい場合などでは,バックアップに費やせる時間が限られます。また,週末にバックアップに費やせる時間が長い場合は,週末にフルバックアップ,平日は差分バックアップとすることで,時間の余裕を得ることができます。

 (3)は,そのシステムに許されるダウン・タイムです。サーバーにデータを書き戻すリストアは,バックアップと同じだけ時間がかかります。データ量にもよりますが,業務の重要度が極めて高い場合は,(3)のチェックを忘れないでください。

 (1)のバックアップすべき容量を,(2)と(3)の短い方の時間で割れば,バックアップ機器に要求する2つのスペック,容量と転送速度が見えてきます。

容量と転送速度を要求とマッチング

表1●現在主流の磁気テープによるバックアップ装置の規格

 後はこの要求を基に,機器(規格)を選択するだけです。

 まず,どのような規格があるかをメディアごとに確認しておきましょう(表1[拡大表示])。現在主流のバックアップ装置の規格は,非圧縮時のテープ1本当たりの容量が少ない順に,DDS,QIC,DLT,AITの4種類です。いずれもテープ・ドライブのハードウエアによるデータの圧縮に対応しています。

 圧縮の効果は,容量の増大と転送速度の向上です。データを1/2に圧縮できれば,容量と転送速度は2倍になります。圧縮のレートは圧縮する方式によりますが,テキスト・データで1/3程度,RDBMSのデータで2/3程度が目安と言えるでしょう。もちろん,JPEGやGIFなど,すでに圧縮済みのデータの圧縮率はあまり高くありません。

 基本的な構成は,1台のテープ・ドライブ,1本のテープでフルバックアップしたときに,要求するスペックを満たすことです。現在は1本で50Gバイトの容量を持つドライブも,100万円弱で入手できます。

 もし転送速度が足りない場合は,ドライブを複数にすることを検討します。ほとんどのテープ・ドライブのインタフェースはSCSI(Small Computer System Interface)で,デイジー・チェーン(数珠つなぎ)による多重化が可能です。ほとんどのケースで転送速度のボトルネックになるのはテープのI/Oです。ドライブを2台にすれば,容量と転送速度が2倍になります。ただしサーバーのスペックによっては,CPUなど他の部分がボトルネックになるケースがあるので注意が必要です。

 また,容量が足りない場合は,オート・チェンジャを備えるドライブを利用すれば回避できます。容量が1本に収まる場合でも,テープ掛け替えの手間を減らせます。

 いずれの場合でもテープの本数が複数になります。複数のテープのうちの1本だけでも読めなくなると,データをリストアできなくなってしまいます。バックアップ・ソフトによっては,テープでRAIDを構成して冗長化することで,テープに1本だけ読み込みエラーが発生した場合でもデータを保証する仕組みを利用できます。どの製品が対応しているかは,本誌2000年10月号pp.150-159の「注目製品選択のポイント」を参照してください。  (本誌)