「Opera」日本語版が“第三”のWWWブラウザとして注目を集めている。セキュリティ上の問題が少なく操作性もよい。ただし,IE向けに構築した社内システムでの使用は難しく,日本語情報も少ない。過度に期待することなく,新たな選択肢の一つと考えたい。

写真1●Opera 6.01日本語版
ブラウザ内に複数のウインドウを表示できる「MDI(マルチプル・ドキュメント・インタフェース)」(写真)と,Internet Explorerなどと同様の「SDI(シングル・ドキュメント・インタフェース)」をサポートしている
図1●Operaの長所と短所

 国内のWWWブラウザ市場に新たな選択肢が登場した。ノルウェーOpera Softwareが開発した「Opera 6.01 for Windows日本語版」である(写真1)。ベータ版が2月8日に発売され,3月下旬には,バグを修正した正式版が登場する*1。有償版を購入すれば,国内販売元のトランスウエアから日本語でサポートを受けられる*2

 特徴は,Internet Explorer(IE)とは異なり,セキュリティ上の問題がほとんど見つかっていないこと。また,Netscape Navigator(NN)と比較すると表示が速く,操作性も良い。通常のWWWブラウジングを行う上では,既存ブラウザに見劣りすることはない(図1)。

 ただし過度の期待は禁物である。ActiveXコントロールやIEの独自タグなどには対応していないので,特にIE向けに構築した社内システムでの使用には適さない。また,国内ではユーザー数が少ないために,日本語情報が乏しい。さらに,ベータ版には一部機能や日本語表示に不具合がある。使用環境や“好み”によって,IEやNNなどの方が優れていると感じるユーザーも当然いるだろう。あくまでも選択肢の一つととらえ,まずは無償版を試してみたい。

企業ユーザーはセキュリティに期待

 Opera日本語版に対する国内ユーザーの期待は大きい。「公開から2週間ちょっとで,ダウンロード数は20万を超え,ライセンスの購入数も2500以上。いずれも予想の倍以上だ」(Opera SoftwareのBusiness Developer for Asia 冨田龍起氏)。2月25日に開催された一般向けの説明会には,導入を考えている企業ユーザーなどが100人ほど集まった。

 企業ユーザーにとっては,今まで見つかっているセキュリティ・ホールが少ないことが魅力。「IEを全社で使用しているが,セキュリティ上の問題が多過ぎる。試してみて良さそうなら,百数十台のマシンすべてをOperaに入れ替えたい」(説明会に参加した,あるエネルギー関連企業の社員)。

 実際,Operaにはセキュリティ・ホールがあまり見つかっていない(表1)。ソフトウエアのセキュリティ・ホール情報を公開している米SecurityFocusのWWWサイトによれば,Operaで見つかっているセキュリティ・ホールは6件である(2002年2月25日時点)*3。IEのように,WWWページを閲覧しただけでウイルスに感染するようなセキュリティ・ホールは見つかっていない。

 もちろん,今後見つからないという保証はない。ユーザー数が少ないために見つかっていないだけかもしれない。それについては,「セキュリティ・ホールが見つかったら,日本語でもきちんとアナウンスするし,フィックスしたバージョンをすぐに公開する」(Opera SoftwareのCEO Jon S. von Tetzchner氏)。

発見日 セキュリティ・ホール名 対象バージョン 内容 対策
2002年
2月13日
Opera Content-Type HTML File Execution Vulnerability 6.01
(Windows版)
Content-Typeがtext/plainのファイルでも,タグが書かれているとHTMLファイルとして取り扱う 「設定」メニュー中の「ファイルタイプ」で,「MIMEタイプで処理を判断する」をチェックする
2001年
12月11日
Multiple Vendor Image Count Denial of Service Vulnerability 5.11
(Windows版)※1
ブラウザがハングアップする JavaScriptを無効にする
2001年
11月15日
Opera Cross- Site Scripting Vul-nerability 5.12
(Windows版)など※2
別のサイトが発行したCookieを,悪意があるサイトに盗まれる JavaScriptを無効にし,「パスワードで保護されたページへの反映にクッキーを使用する」を有効にする
2001年
8月14日
Multiple Vendor HTML Form Protocol Vulnerability 5.12
(Windows版)など※2
任意のマシンへコマンドなどを勝手に送信させられる JavaScriptを無効にするとともに,安易にフォーム送信しない
2001年
7月11日
Opera Web Browser Malformed Header Vulnerabilty 5.0
(Linux版)
ブラウザがハングアップする バージョン・アップする
2001年
4月24日
Opera Web Browser 5 Warning Dialogue Bypass Vulnerability 5.02
(Windows版)
警告なくファイルがダウンロードされて実行される バージョン・アップする
表1●Operaで見つかったセキュリティ・ホール
(米SecurityFocus http://www.securityfocus.com/ が公開している情報に基づく)

※1 6.01(Windows版)も影響を受けることを編集部で確認した 
※2 6.01(Windows版)が影響を受けるかどうかは不明

Windowsでは引き続き注意が必要

 また,Operaを採用したとしてもWindows OSを使う限りは,IEのセキュリティ・ホールの影響があることに注意しておくべきだ。Outlook Expressをはじめ,IEのコンポーネントを使うアプリケーションは多い。Windowsの機能でもしばしば使用される*4。Operaを使えばWWWページ閲覧中のリスクは軽減されるが,IEのセキュリティ・パッチは適用する必要がある。

 Jon S. von Tetzchner氏は「企業や教育機関のような,複数のOSが混在している環境にOperaは適している」と見ている。Operaの英語版には,WindowsやLinux,MacintoshおよびOS/2対応版がある。ブラウザのエンジン自体はいずれも同じなので,見た目や操作性,設定方法などは全く同じだという。「ユーザーはどのマシンでも同じように操作できるし,管理者の負担も小さい」(同氏)

 しかしながら,現状では日本語版はWindows対応版のみ。トランスウエアによれば,Windows対応版の正式版を出荷後,MacintoshやLinux対応版を出荷する予定である。

(勝村 幸博=katsumur@nikkeibp.co.jp,IT Pro)

次回(下)へ続く