「【緊急アンケート】あなたのブラウザは安全ですか?」と題して,日経オープンシステムとIT Proが,IT Pro会員の皆様を対象に実施したWebアンケートの分析結果をご報告します(調査期間は2002年1月15日~1月24日,有効回答数3016)。ご回答いただいた皆様,誠にありがとうございました。なお,本記事は,日経オープンシステム2002年2月号に掲載した「検証&調査●WWWブラウザのセキュリティ意識」を要約したものです。

◆結果報告◆
▲71.1%がIEを使用しており,使い勝手のよさで選択している。IE以外のユーザーは,セキュリティを重視して選択している。
▲全体的にセキュリティの意識は高い。最新パッチを適用しているユーザーは75.4%,設定を変更しているユーザーは64.9%だった。
▲ただし,その内訳は2極化している。パッチを適用しているユーザーの69.3%が設定を変更しているのに対し,適用していないユーザーでは43.5%にとどまる。

 日経オープンシステムとIT Proは2002年1月,IT Pro*1会員を対象に「ブラウザ・セキュリティ意識調査」を実施した。ユーザーが企業内で主に使用しているWWWブラウザの種類やパッチの適用状況などを調査し,ブラウザに関するセキュリティ意識を探ることが目的である。有効回答数は3016だった。

図1●主に使用しているブラウザの種類(有効回答数:3016)

 調査結果から,(1)Internet Explorer(IE)ユーザーが7割を占め,Netscape Navigator(NN)*2ユーザーは2割程度,(2)選択理由は3人に1人が「使い勝手がよいから」を挙げる。ただし,IE以外のユーザーはセキュリティを重視して選択している,(3)セキュリティ意識は全体的に高く,全体の3分の2が最新パッチを適用し,6割以上が設定変更,4割がブラウザの使い分けをしている,(4)ただしパッチを適用しないユーザーは,設定変更などの別の対策を施す割合も低く,意識の格差が存在する――ことが分かった。

●ブラウザの使用状況
IEが7割でNNは2割,Operaが“第3”のブラウザに

 回答者が主に使用しているブラウザは,予想通りIEがトップで71.1%,NNは20.2%だった(図1)。

 特筆すべきはOperaの台頭である。日本語に対応した「Opera 6.0 for Windows」は,2001年11月に公開されたばかりにもかかわらず,3.3%(99件)ではあるものの“第3”のブラウザとなった*5。「IEにはセキュリティ・ホールが多過ぎる。やっと日本語対応版が公開されたのでOperaに切り替えた。実際,私の周りでもユーザーは増えている」(プログラマ,ハード/ソフトのメーカー/ベンダー)。「試してみたが,あまり使い勝手がよくなかった」(研究・開発,ハード/ソフトのメーカー/ベンダー),「もっと普及して“実績”ができないと,企業に導入するのは難しい」(SE,システム・インテグレータ)といったコメントもあるものの,選択肢の少ないブラウザ市場において,ユーザーの期待は高い。

図2●ブラウザの選択理由(複数回答,有効回答数:3016)

3人に1人は使い勝手を重視

 ブラウザの選択理由としては,「使い勝手がよいから」が34.3%(複数回答)で最も多く,次いで「セキュリティ上の問題が少ないと思うから」が29.8%であった(図2[拡大表示])。

 選択理由の上位3番目以降には,“消極的”な理由が並ぶ。勤務先で決められているために選択の余地がないユーザーからは,「セキュリティ・ホールだらけのIEは使いたくないが,使わざるを得ない。システム運用担当者自身がリスクを分かっていない」(SE,システム・インテグレータ)といった不満が寄せられている。

 IEだけを対象としたサイトが増えたために,使用ブラウザを事実上制限されているユーザーも多い。「NNでは正常に表示されないWWWサイトが存在するので,仕方なくIEを使っている」(研究・開発,ハード/ソフトのメーカー/ベンダー)。「IEにしか対応していない社内/社外システムがあるのは信じられない。システム構築の容易さを重視して,セキュリティを二の次にしているとしか思えない」(SE,システム・インテグレータ)。こういった不満が多いことを,サイト製作者は肝に銘じておかなければならない。

図3●ブラウザごとの選択理由(複数回答,有効回答数:3016)*6

IE以外はセキュリティで選択

 選択理由をブラウザ別に集計すると,最新版ではないIE 5.0x/5.5では「勤務先で決められているから」などの消極的な理由が上位を占め,IE以外ではセキュリティが重視されている(図3[拡大表示]*6)。全体で最も回答数が多かった「使い勝手」は,いずれのブラウザでも4位以内に入っている。このことから,あるブラウザが特に使いやすいということはなく,慣れや好みが大きく影響すると考えられる。

 IE以外のブラウザで「セキュリティ上の問題が少ないから」が上位であることは予想通りだったが,IE 6でも21.4%と比較的多かった。「他社製品が必ずしも安全とはいえないと思う。パッチや情報は適宜公開されるので,きちんと対応すれば,IEのほうがセキュリティ面は優れているのではないだろうか」(営業,システム・インテグレータ)。同様に,「IEだけが危ない」と言われている現状に,異を唱えるコメントは20件ほど寄せられている。確かに,IEといえども,きちんと対策を施していれば,セキュリティ・ホールを突かれることはない。

 それでは,IEユーザーはそのことを認識して,きちんと対策を施しているのだろうか。

(勝村 幸博=katsumur@nikkeibp.co.jp,IT Pro

 本記事は日経オープンシステム2002年2月号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。なお本号のご購入はバックナンバー,または日経オープンシステムの定期ご購読をご利用ください。