ECサイト構築にパッケージ製品を利用するユーザーが増えてきた。国内で入手できるECサイト構築パッケージ製品は30を超え,一見選択は難しそうだ。しかしポイントを見極めれば,検討すべき製品を絞り込める。ポイントは,機能,カスタマイズの容易さ,提供形態の3つである。

使うかどうかよりも,どれを選ぶか
パッケージ採用のメリットは(1)開発の短期化,(2)開発コストの削減,(3)品質の確保――だ(図1[拡大表示])。短期開発,低コストが求められることの多いECシステムの選択肢として,パッケージの利用は外せない。
ただし,パッケージを採用する場合に悩ましいのが製品選びである。まず製品数が多い。国内で入手できる製品は30を超える(表1[拡大表示])。製品の差も分かりにくい。どの製品も,展示された商品をショッピング・カートに入れ,決済するという基本的な仕組みはそう変わらないように見える。にもかかわらず,パッケージ製品の価格は50万~2000万円超と幅広い。
選択のポイントは3つ
実際,「約15社のコンペを経験したこともある」(リンコム 常務取締役 市場開発部長 篠原修司氏)というように,多数の製品を比較検討することは珍しくない。常にこのような大規模のコンペが可能なら,自社のシステムに最適な製品を選びやすい。
しかし,開発期間に余裕が無ければ,多くの製品を検討する時間を取るのは難しくなる。最適な製品を選べなければ,本来の目的である開発期間の短縮化や開発コスト削減といったメリットを十分享受できなくなってしまう。
パッケージを選択するために重要なポイントは大きく3つある(図2[拡大表示])。(1)利用したい機能の有無,(2)カスタマイズの容易さ,(3)提供形態――だ。これらの点に着目することで,自社システムに最適な製品を絞り込むことができる。以下では,これらのポイントを順に解説していく。
ポイント1●機能の有無
基本的な機能は同じ
決済やマーケティング機能で差
パッケージ製品であればまず確認しなければならないポイントは,必要な機能の有無である。
どのECパッケージ製品でも,商品を購入する基本的な部分や,商品マスターの登録,管理機能,いつから商品展示するかを自動的に設定する機能などは基本機能として備えている。製品による差はほとんどない。ダイレクト・メールの送信機能や,購入価格の一部をその店舗で再利用できるポイントとして還元する機能も,多くの製品が備えるようになった。「基本的な機能は飽和状態に近く,他製品と差異化しにくい」(ベイテックシステムズ CEO & CTO 原口豊氏)状況だ。
差があるのはこれら以外の部分,決済機能やマーケティング支援機能である。現在ECサイトで用いられる主な決済手段には,クレジット・カード,コンビニ決済,銀行振り込み,宅急便の代金引換サービスなどがある。製品によって,これら決済機能のほとんどを備えるもの,銀行振込のみなど一部しか備えないもの,全く備えておらず,他の決済専用ソフトウエア・コンポーネントと組み合わせることを前提としているものなどがある。
サイトが扱う商品や対象とする顧客層にもよるが,特に決済手段が重要になるBtoCサイトでは,どのような決済手段が利用できるか注意したい。
マーケティングを支援する機能としてはページのヒット数や,会員のカテゴリ別にどのような製品がよく売れているかを調べるといった基本的な機能はほとんどの製品が備えている。ただ,例えば韓国E-netの「Commerce21 Sell-Sideソリューション」のように,ユーザーのページ遷移をトラッキングし,効果的な画面遷移設計を支援する機能などを内蔵した製品がある。こうした機能は製品ごとに異なる。