Step2 もらえる設定情報は何だろう
手に入れた設定情報には
貸し出し期限が付いている

 DHCP通信によって,パソコンはDHCPサーバーからIPアドレスだけでなく,さまざまな設定情報をもらう。Step2では,どんな設定情報をもらっているのかを確認しよう。

どんな情報か確認してみよう

図5 パソコンがDHCPサーバーから割り当てられた設定情報
Windows95/98/MeならWinipcfg.exeを実行,WindowsNT/ 2000/XPならコマンド・プロンプトから「ipconfig /all」と打ち込んで実行すると,割り当てられた設定情報が確認できる。
 パソコンがDHCPサーバーから,どんな設定情報を割り当てられているかは,パソコン起動後(あるいはネットワークに接続後)に自分自身の設定状況を調べるとわかる。具体的には,Windows95/98/Meなら,Winipcfg. exeというプログラムを実行させる(図5[拡大表示](a))。WindowsNT/2000/XPなら,コマンド・プロンプトから「ipconfig /all」とコマンドを打ち込んで実行させてみればよい(b)。いずれの場合も,ほとんど同じような情報が表示されるはずだ。

 細かく見ていくと,自分のIPアドレスのほか,サブネット・マスクの値,デフォルト・ゲートウエイDNSサーバーのIPアドレスが割り当てられているのがわかる。DHCPサーバーのIPアドレスもわかる。

 さらに画面の下の方には,「リース取得日」と「リース期限」という項目がある。リース取得日とは,DHCP通信によってパソコンが設定情報をもらった日時,リース期限とはその設定情報が無効になる日時である。

 実は,パソコンはDHCPサーバーから設定情報を割り当てられるとき,その設定情報の有効期限も併せて取得していたのである。つまり,パソコンはDHCPサーバーから割り当てられたIPアドレスなどの設定情報を期限が切れたら,返さなくてはならないのだ。そのまま勝手に未来永劫使い続けることはできない。期限が切れたらどうなるか,という話は後半の実用編で詳しく説明するが,このリース期限によってDHCPサーバーは一度パソコンに割り当ててしまったIPアドレスでも,期限が切れた時点でほかのパソコンにも割り当てられるようになる。

規格上は70種以上もの数

 図5[拡大表示]で確認したのが,パソコンがDHCPサーバーからもらう基本的な設定情報である。しかし,RFC2132を見ると,Webサーバー,メール・サーバー,時刻サーバー,プリント(LPR)・サーバーなどのIPアドレス情報もDHCPでやりとりできるとあり,その数は実に70種類以上ある。

 ただ,こうしたすべての情報を割り当てる必要はなく,パソコンは最初にDHCPディスカバー・パケットをブロードキャストする際に,どんな情報がほしいかを明記し,DHCPサーバーはこの情報を基に自分が答えられるものだけを返答することになる。

DHCPサーバー側からみると…

 では,DHCPサーバー側では設定情報をどう管理しているのだろうか。

図6 DHCPサーバー側はどうなっているか(Windows2000Serverの設定例)
DHCPサーバーにはパソコンに割り当てる設定情報があらかじめ登録されている。
 主要な項目を確認しておくと,まずはパソコンに割り当てるIPアドレスだ。DHCPサーバー側では割り当てるアドレスの範囲をあらかじめ決めておく(図6[拡大表示](a))。例えば,パソコンに割り当てるIPアドレスの範囲は,「192.168.10.1~192.168.10.254まで」といった指定方法になる。

 サブネット・マスクの値,DNSサーバーやデフォルト・ゲートウエイのIPアドレスなどは,すべてのパソコンに同じ情報を伝えればよいので,単に数値を手入力するだけだ(b)。

 また,リース期限もDHCPサーバー側で設定しなければならない(c)。ただ,通常はデフォルト設定のままでよく,あまり気にする必要はない。ちなみにWindows2000Serverのデフォルト値は8日となっている。市販のブロードバンド・ルーターなどは,1カ月程度に設定されていることが多い。

 しかし,ひんぱんにノート・パソコンを抜き差しするようなフリー・アドレス制のオフィスなどでは,リース期限を短くすると効率的にIPアドレスを管理できるようになる。逆にパソコンの移動があまりないような場所では,リース期間を長めに設定しても問題はないだろう。

サーバーに固定IPを振る方法

 DHCPを使うと,いつも同じIPアドレスが自分に割り当てられるとは限らない。ファイル・サーバーを再起動したら,DHCPサーバーから違うIPアドレスが割り当てられてしまったため,うまくアクセスできない,といったトラブルを起こす原因にもなる。

 こうしたケースを想定してDHCPサーバーでは,割り当てるIPアドレスを予約しておけるようになっている(d)。サーバー・マシンに装着されたLANボードに書かれているMACアドレスに対して,固定したいIPアドレスをあらかじめ登録しておくのである。これで,DHCPサーバーは予約しておいたIPアドレスを特定のサーバー・マシンに必ず割り当てるようになる。

 ちなみに,それぞれのサーバー・マシンに対して手動でIPアドレスを割り当て,パソコンに対してはDHCPで自動で割り当てるような,手動と自動を併用するケースもある。このときは,DHCPサーバーの方で,サーバーが使うIPアドレスの範囲を除外するように,割り当て範囲を調節する。例えば,DHCPサーバーが割り当てられるIPアドレスに192.168.10.1~192.168.10.200までを予約しておき,サーバーに手動で割り当てるアドレスの範囲として192.168. 10.201~192.168.10.254までを使うような方法である。