雑音に強いスペクトラム拡散

 雑音は,広い周波数範囲に広がっているものもありますが,多くの場合は特定の周波数に集中しています。もし,その周波数を使って信号を送ろうとすると,信号は雑音に埋もれてしまい,最悪の場合,通信が途絶えてしまいます。

 無線通信では,ケーブルのようにシールドを付けて雑音の混入を防ぐことができません。そのため,こうした雑音にもあまり影響を受けないような通信方式が必要になります。スペクトラム拡散方式は特定の周波数に雑音があっても通信できるようにする有力な手段です。

 ディジタル信号をある周波数の搬送波に乗せる(変調する)と,その周波数を中心とする狭い帯域の電波になります。もし,雑音がこの周波数帯域に集中していると,ディジタル信号はビット誤りを起こしてしまいます。

 スペクトラム拡散では,まずディジタル信号の周波数成分(スペクトラム)を広い帯域に拡散し,その後で搬送波に乗せて送ります。すると,特定の周波数帯域に集中した雑音があっても,信号の大部分は影響を受けずに相手まで届き,通信できます(pict.2[拡大表示])。

 情報を乗せたディジタル信号は,広い周波数帯域に分散されて伝送されます。このため,その周波数帯域の一部だけが雑音に埋もれても,信号全体にはほとんど影響を受けないのです。

 信号の周波数を広い帯域に拡散するには,拡散符号と呼ぶ特殊な符号をディジタル信号に加えて処理します。

 この方法は,携帯電話のCDMAシーディーエムエー方式や無線LANなどで利用されています。