通信にとって雑音(ノイズ)は大敵です。通信相手に送る信号に雑音が加わると,通信に支障が出てしまいます。このため,雑音の影響を受けにくい伝送方式を使うことが大切です。

雑音にもいろいろある

 情報を伝える信号に妨害を与えるものをまとめて雑音と呼んでいます。雑音には,自然界に存在するもの,人工的にできたもの,他の信号が漏れてきたもの,といろいろあります。

 空中には,いろいろな雑音電波が飛び交っています。雑音電波は,雷などの自然現象や,自動車やバイクなどのエンジン,電車のパンタグラフが出す火花などによって発生します。電気掃除機やパソコンなども雑音を出しています(pict.1[拡大表示])。電話ケーブルのようにたくさんの銅線が束ねられている場合,隣の線の信号が漏れてくることがあります。これも一種の雑音です。

 信号を伝えるケーブルや増幅器の部品などからは「熱雑音」が発生します。常温でも部品を構成する原子は激しく運動しており,これが雑音を引き起こすのです。熱雑音は,低周波から超高周波まで非常に広い範囲の周波数を一様に含んでいて,偏りがありません。こうした雑音をホワイト・ノイズ(白色雑音)とも呼びます。

 これらの雑音が伝送中の信号に加わると,信号の電圧が変動するため受信側で信号を読み取りにくくなります。どのくらいの雑音があっても通信に差し支えないかは,信号と雑音の電圧の比(S/N,SN比)で決まります。信号の電圧が高ければ少しぐらい雑音が加わっても問題になりませんが,信号の電圧が小さいとわずかの雑音でも支障が出ます。