目的のコンピュータを探して,そのアドレスを調べる――。これはどんなネットワーク・ソフトにも共通する基本中の基本だ。WindowsXPネットワークも例外ではなく,二つのしくみでこれを実現している。ネットワークにつながったWindowsマシンを一覧表示するしくみと,IPアドレスを調べて実際にアクセスするしくみである。第1部では,WindowsXPネットワークの土台を支えるこれらのしくみを見ていこう。

旧版から受け継いだ2大機能

 WindowsXPマシンには,あらかじめユーザーが名前を付ける。インストールする作業の途中で,「コンピュータ名」という項目に名前を記入したはずだ。この名前は,正式にはNetBIOS(ネットバイオス)名と呼ばれ,ほかのWindowsバージョンにも採用されている。

 WindowsXPネットワークでは,このNetBIOS名で各マシンを特定する。例えば,ユーザーがネットワーク・コンピュータ・アイコンなどをクリックすると,ネットワークにつながっているWindowsマシンのNetBIOS名一覧が表示される。このNetBIOS名のリスト(「ブラウズ・リスト」という)を管理するしくみが,「コンピュータ・ブラウザ」である。

 この一覧に表示されたマシンのアイコンをクリックすれば,そのマシンの共有フォルダなどが表示される。ここでは,ユーザーがクリックしたマシンのIPアドレスを調べる必要がある。このNetBIOS名からIPアドレスを調べるしくみがもう一つの基盤技術である「NetBIOS名の名前解決」だ。

 これら2大機能は,Windows95以降のすべてのバージョンが備えており,その動作もほとんど変わっていない。

 通常,これら二つの機能はスムーズに連携しているように見える。しかし,WindowsXP内部では完全に独立して動いている。このため,コンピュータ・ブラウザが管理するブラウズ・リストの内容と,NetBIOS名の名前解決で調べた内容が食い違うことがある。

図1 一覧表示されるのにつながらない,見えないのにつながる理由
Server2マシンはコンピュータ一覧には表示されるが,異常終了したため実際にはアクセスできない。逆に,Server3は一覧には表示されないが,アドレスの対応表に登録されているので,アクセスできる。
図2 WindowsXPマシンを一覧表示するしくみ
マスター・ブラウザになったWindowsマシンが一覧情報(ブラウズ・リスト)を一元管理し,この情報をほかのWindowsマシンが参照する。
 すると,「コンピュータ一覧には表示されるのに実際にはつながらない」,「一覧にはないコンピュータへもアクセスできる」といった不可解な現象に出くわすことになる(図1[拡大表示])。

ドメインとワークグループの見え方

 では,二つの機能を個別にもう少し掘り下げていこう。まずは,コンピュータ・ブラウザのしくみだ。

 一覧表示された画面を見ると,グループ分けされている(図2[拡大表示])。Windowsにはマシンの所属先として「ワークグループ」と「ドメイン」の2種類がある。詳細は第2部に譲るが,WindowsXP Professionalではマシンはそのどちらか一方に所属することになる。しかし,コンピュータ・ブラウザはこの所属先を区別せず,同じ名前が付いていると同一グループのように表示する。つまり,YYYというドメインに所属するマシンと,YYYというワークグループに所属するマシンは,同一のYYYグループ内に表示される。

 一方,WindowsXP Home Editionにはドメインに所属する設定がなく,ワークグループにしか所属できない。総論でも書いたように,Home Editionになって機能が削除された部分である。

 WindowsNT/2000は,WindowsXP Professionalと同様にドメインかワークグループのどちらかに所属するように設定する。この考え方が今後のWindowsネットワークの主流となるはずだ。

 ところが,Home Editionの前身であるWindows95/98/Meの設定は,ほかのOSとまったく違う。ドメインとワークグループを個別に設定するのだ。このため,「XXXドメインに所属し,YYYワークグループにも所属する」というように設定できる。この場合,コンピュータ・ブラウザはドメイン名ではなく,ワークグループ名でグループ化する。

設定不要なコンピュータ・ブラウザ

 このコンピュータ一覧を管理するしくみは,WindowsXPが自動的に行い,ユーザーが設定する部分はない。それは,表示グループごとにブラウズ・リストを管理するWindowsXPマシン(「マスター・ブラウザ」と呼ぶ)が,自動的に選ばれるようにできているからである。この点も従来バージョンと同じで,どのバージョンでもマスター・ブラウザになれる。

 WindowsXPマシンは,自分が所属するグループにマスター・ブラウザがいないことに気づいた,あるいは起動時などに自分がマスター・ブラウザになろうとしたとき,ブロードキャスト・パケットの中に「選定データグラム」というデータを入れて送出する。

 選定データグラムには,OSのバージョンや動作モードを表す数値が入る。この数値は大きいものから順に,WindowsNT/2000 Server,Windows 2000/XP Professional,Windows95 /98/MeやHome Editionとなり,OSごとに優先順位が決まっている。そして,より大きい数値(高い優先順位)のマシンがマスター・ブラウザになる。これは,電源を落とす可能性の低いサーバー・マシンなどをマスター・ブラウザにするためである。

 マスター・ブラウザが決まれば,ほかのWindowsマシンは,起動時に自分自身のコンピュータ名(NetBIOS名)をマスター・ブラウザに登録し,終了時に削除要求を通知する。したがって,Windowsマシンはマスター・ブラウザが持つブラウズ・リストを参照することで,最新のコンピュータ一覧を取得できる。