95,98,Me(ミー)と続いたクライアントOSを新しいNTベースに移行すると銘打って,2001年11月に鳴り物入りで登場したWindowsXP(ウインドウズエックスピー)。見栄えはさほど旧版と変わらないが,中身はOSアーキテクチャだけでなく,ネットワーク機能も大きく変わった。

 最近では,新しいパソコンを購入すれば,ほとんどの場合,WindowsXPがプレインストールされてくる。そろそろ身の回りで見かけるようになってきたのではないだろうか。となると,どんな管理者でも他人事で済ませてはいられない。同じLANにWindowsXPもつながるからだ。

バージョンアップごとに機能追加

 ところが,このWindowsXP。旧版にも増して,そのネットワーク機能がどうなっていて,どのように設定すべきかがわかりにくい。

 マイクロソフトはバージョンを重ねるごとに,新たなネットワーク機能を追加してきた。その新機能の多くは,企業ネットワーク全体を管理するためのものであり,大規模ネットワーク向けである。その最たるものが,数千人以上の大規模ネットワークを管理する機能であるActiveDirectoryアクティブディレクトリだ。

 こうした新機能は部署単位やSOHOソーホーでWindowsを使うときにはほとんど関係がない。人によっては無関係な機能まで付いていることが,WindowsXPのネットワーク機能をわかりにくくしている原因の一つである。

ウイザードという仮面をまとう

 一方マイクロソフトはバージョンアップのたびに,エンド・ユーザーができるだけ簡単に設定できるしくみも加えてきた。WindowsXPでは,その集大成として「ネットワーク・セットアップ・ウイザード」というしくみが加わわった。

 これは,インターネット直結か社内LAN接続かというような選択肢を選びながら,自分が使っているネットワーク環境を答えていくだけで,自動的に必要なソフトをセットアップしてくれるしくみである。

 つまり,WindowsXPのネットワーク機能は,ウイザードによって“生”の設定を簡単には見えなくしてしまったのだ。このため,「なにを変更すれと,どこが変わるのか」といったことが非常にわかりにくい。

なんとなく使えてしまう恐さ

 さらにこのウイザードによって,エンド・ユーザーは自分のパソコンのネットワーク設定を気にしないで使うことになる。つまり,Linux(リナックス)などのように,設定を正しくしておかないとLANに接続できなくなるわけではなく,インストールするだけでなんとなく使えてしまう。

 しかし,このデフォルト設定が必ずしも正しいとは限らない。オフィスのネットワーク環境は各社各様のはず。本来なら設定を変えておくべきなのに,「動いているから大丈夫」ということになりかねない。「WindowsXPを入れたらLANが遅くなった」,「ときどきサーバーに接続できなくなる」といった障害の多くは,このようないい加減な設定のまま使い続けていることが原因である。セキュリティ面からしても,デフォルト設定のまま使うのはかなり危険である。

Home Editonは機能が減っている

 さらに,WindowsXPは従来バージョンが持っていた機能をすべて持っているとは限らない。特に注意しなければならないのが,家庭向けのWindowsXP Home Edition(ホームエディション)である。

 従来のバージョンアップは,基本的に新機能が追加されるだけで,旧機能はそのまま残っていた。ところが,Home Editionでは,オフィスLAN向けのネットワーク機能が大幅に削られた。これでは,「旧版でも使えていたのだから,WindowsXPでも使えるはず」という,従来の常識も通用しない。

基本機能を四つに分けて調べよう

 そこで今回の特集記事では,ウイザードなどを使わずに「生の設定」を中心に見ていくことにしよう。また,大規模ネットワークではなく,パソコン数十台程度で作るWindowsネットワークをターゲットにして,それを動かしているカラクリを詳しく探っていく。

 実は,小規模向けのネットワーク機能は,WindowsXPだからといっても旧バージョンとさほど変わらない。昔からあるNetBIOS(ネットバイオス)というしくみ(詳細は第1部以降で解説)が,今もなお根幹として動いている。

 ただ,NetBIOS関連だけでも多くの機能が組み合わされており,かなり複雑である。そこで,このWindowsXPネットワークの基本機能を四つに分けることにした。(1)コンピュータ一覧を表示するもの,(2)実際にアクセスするもの,(3)ユーザーや共有フォルダなどを管理するもの,(4)インターネット接続に関係するもの――の四つである。では,これら4大機能を順番に究めていこう。