高速化するには工夫が必要

 ディジタル信号を変調する際,限られた帯域でできるだけ速くデータを送れる方が望ましいのは当然です。とくに最近のブロードバンド時代には,高速のデータ伝送の必要性が重要になっています。アナログの伝送路で伝送速度を上げるにはいくつか方法があります。

 一つは,振幅変調と位相変調を組み合わせる方法です。これは直交振幅変調(QAM)と呼ばれています。

 この方法では,一つの搬送波に対して振幅と位相を同時に変化させます。すると,振幅と位相でそれぞれ二つの値をとれるので合わせて4値になり,一度に2ビットの情報を送れるようになります(pict.2[拡大表示]の上図)。

 さらに振幅を4値,位相を4値にすれば,全部で16個の組み合わせになり,1回で4ビットのデータを送れます。今日では,両方合わせて64値(6ビット)や256値(8ビット),さらにそれ以上のビット数の多値QAMも使われています。こうした多値QAMは,加入電話網を使う高速モデムやCATV用のケーブル・モデムなどが採用しています。

 伝送速度を上げるにはもう一つ,搬送波をたくさん用意して,それぞれに信号を乗せるという方法もあります。周波数が異なる搬送波にディジタル信号を割り当てて変調し,受信側で全体をまとめれば一気に多くの情報を送れます。

 ここで重要なのは,各搬送波の周波数をお互いに干渉しないように選ぶことです。このような工夫を施した変調方法はOFDMと呼び,無線LANなどで使われています(pict.2[拡大表示]の下図)。