できるだけ周波数帯域を狭くする

 ディジタル信号を銅線ケーブルで伝送する場合,周波数帯域が広いと減衰が大きくなり,短い距離でしか使えません。そこで,帯域が狭くなる符号化方式が有利になります。

 ディジタル信号を伝送するのに必要な周波数帯域は,1秒間に伝送する符号の数に比例します。したがって,周波数帯域を狭くするには,伝送する符号の数をできるだけ少なくすることが必要です。

 ここまで見てきた符号化方式は,一つの符号で1ビットを表す2値符号でした。これに対して,符号の電圧が3値以上の多値符号を使えば,一つの符号で1ビットより多い情報を表せます。つまり,それだけ符号の数を減らして周波数帯域を狭くできます。

 例えば,一つの符号で四つ(2ビット分)の値をとる4値符号にすれば,2値符号の半分の帯域で同じ量の情報を送れます(pict.2[拡大表示])。ただし,この場合でも,信号全体で平均の電圧ができるだけ0になるようにする工夫が必要です。

 AMI符号もプラス,0,マイナスという三つの値を使いますが,プラスとマイナスの符号は同じ“1”を表すので,情報量は増えません。

 電圧の段階をもっと増やして,それぞれに符号を割り当てれば,1秒間に伝送する符号の数が大きく減り,狭い帯域でもたくさんの情報を送れます。しかしそれにも限界があります。あまり電圧の段階を多くすると,符号間の電圧差が小さくなってしまい,雑音の影響でビット・エラーを起こしやすくなります。ですから,極端に多値化を進めることはできません。