ディジタル情報をそのままケーブルで送るディジタル伝送の場合,どのような信号に“1”と“0”を対応させて送るかをまず決めなければなりません。これが伝送符号化です。途中で信号を増幅するのに適した符号,伝送する周波数帯域をできるだけ狭くする符号など,いろいろな種類があります。

バランスのとれた符号にする

 ディジタル伝送では,“1”と“0”の情報を二つの電圧値に対応させて表すのが普通です。

 このような単純な符号化は,隣り合った装置間のようにきわめて短い距離をケーブルで結ぶときに使われます。しかし,長い距離を伝送すると,信号が減衰したり,タイミングがずれたりするため,受信側で“1”と“0”を判別しにくくなります。ですから,長距離伝送の際にも間違いなく“1”と“0”の情報を送れるような符号に変換します。

 一つ例を挙げましょう。もとのディジタル情報は全体として“0”か“1”に偏っているため,単純な符号化ではプラスかマイナスの比率が高くなります。こうした信号は途中でうまく増幅できないため,受信側で“1”や“0”を判別できなくなります。

 そこで,伝送路に送り出す前に,プラスとマイナスのバランスがとれた符号に変換します(pict.1[拡大表示])。“0”のときは電圧を0ボルトのままですが,“1”のときはプラスとマイナスの信号を交互に送ります。このような伝送符号を「AMI」(alternate mark inversion)と呼び,銅線を使ったディジタル伝送路で広く使われています。