LAN間接続TCP/IPインターネットワーキング
著者:西田竹志
出版:ソフト・リサーチ・センター
ページ:514ページ
価格:6602円
ISBN:4-915778-23-1
TCP/IPバイブル改訂新版
原題:SECOND EDITION running a successful network
著者:ケビン・ワッシュバーン,ジム・エバンス
翻訳:オープンループ,海江田一詩
出版:アスキー
ページ:670ページ
価格:5800円
ISBN:4-7561-3056-9
TCP/IPネットワーク管理第2版
原題:TCP/IP Network Administration Second Edition
著者:クレイグ・ハント
監訳:村井純
出版:オライリー・ジャパン
ページ:612ページ
価格:5800円
ISBN:4-900900-68-0

TCP/IPがわかってきたら

 定番書編で紹介した『マスタリングTCP/IP入門編』などで基礎を身につけたあとに,どんな本を読めばいいのだろうか。“その次”の選択肢を3冊ほど紹介しよう。

 1冊目の『LAN間接続 TCP/IPインターネットワーキング』は定番書編で紹介した『COMシリーズ 図解TCP/IP入門』と同じ著者によるLAN間接続の解説書である。図版やイラストが多用され,親しみやすく書かれているが,「『マスタリングTCP/IP入門編』よりは詳しく書かれている。概要を理解したあとで読むと結構役立つ」(アンリツの岩崎氏)。ほかのエンジニアからも「初心者向けに使える」(富士通システムサポート本部の尾崎楽人氏)という声があった。

 2冊目の『TCP/IPバイブル改訂新版』は,海外では以前から定評のある本である。国内では改訂にともない,版元が変わり,現在はアスキーから出版されている。プロトコルの仕様や動作といった観点ではなく,TCP/IPネットワークの設計・構築・運用といった側面に焦点を当てており,ネットワーク管理者には実用的な内容になっている。「基礎から全体像を学べて読み応えのある良書」(ニッセイ情報テクノロジーの萩森康史氏)という評価が多い。バイブルという名前が付いているが,むしろ「適度なボリュームで全体的にしっかり書いてあるバランスの良さが魅力」(レイヤーの田中宣彦氏)である。670ページと分量は多いが,読みこなせないほどではないし,意欲のある読者なら適度な歯ごたえのある分量と言える。

 3冊目の『TCP/IPネットワーク管理』はUNIXを使ってTCP/IPネットワーク環境を構築するためのノウハウをまとめた本である。OSカーネルの設定からDNSやメールなど各種サーバーの設置までを具体的なUNIXコマンドを使いながら解説する。

 本書は,ある意味では定番と言っても差し支えない本である。というのも,インターネット黎明期にはカマーのTCP/IP解説書(定番書編参照)とともに,92年に出版された本書の初版がほとんど唯一の参考書だったからだ。今も本質的にはそうだが,当時のインターネットはUNIXネットワークの相互接続を意味していた。「TCP/IPネットワークの相互接続と運用を実務的に解説した本は当時これしかなかった」(早稲田大学の後藤滋樹教授)のである。本書の監訳者が慶応大学の村井純教授という大物なのも,こういった背景があるからだ。

TCP/IPのプロを目指すなら

 
レイヤーの田中宣彦氏。シェアウエアのLANアナライザ「PacMon」の開発者。   インターネットイニシアティブの三膳孝通運用部部長。本誌連載「Q&A」の回答者。
Microsoft Windows 2000テクニカルリファレンス
TCP/IPプロトコル&サービスガイド

原題:Microsoft Windows2000 TCP/IP Protocols and Services Technical Reference
著者:ジョセフ・G・デイヴィス,トマス・リー
翻訳:トップスタジオ
出版:日経BPソフトプレス
ページ:573ページ
価格:4800円
ISBN:4-89100-164-X
UNIXネットワ-クプログラミング第2版Vol.1,Vol.2
原題:UNIX NNETWORK PROGRAMMING, Volume1 Second Edition,Volume2 Second Edition
著者:W・リチャ-ド・スティ-ヴンス
翻訳:篠田陽一
出版:ピアソン・エデュケーション
ページ:978ページ,544ページ
価格:8000円,4800円
ISBN:4-89471-205-9,4-89471-257-1
 それではTCP/IPの達人たちはどんな本を実務に使っているのか。シェアウエアのLANアナライザ・ソフトであるPacMonの開発者レイヤーの田中氏と,インターネットイニシアティブ(IIJ)技術本部の三膳孝道部長に聞いてみた。

 田中氏が推薦するのは『Microsoft Windows 2000テクニカルリファレンス TCP/IPプロトコル&サービスガイド』である。「最初から最後まで情報がぎっしりと詰まった内容の濃い本」(田中氏)という。マイクロソフトの公式解説書ではあるが,この本の本質はTCP/IPの解析と解説にある。非常に乱暴な言い方をするならスティーヴンスの『詳解TCP/IP』(定番書編参照)をWindows2000的に書き直したような本である。

 著者も前書きで述べているように,スティーヴンス本を含む多くのTCP/IP解説書はUNIX環境を前提にしている。本書の最大の価値はWindows2000環境を前提にTCP/IPを解説している点にある。

 一つひとつのプロトコルの動作を解析したWindows2000でのパケット・ダンプが付属する。こうした構成はステーヴンス本のスタイルを踏襲している。付録のCD-ROMには生のデータが収録されており,読者は文字通り触って確認できる。

 一方の三膳氏は『UNIXネットワ-クプログラミング第2版 Vol.1,2』 を挙げる。こちらはステーヴンスが本業のプログラミングの視点から存分にTCP/IPを解説した本で,開くとサンプル・コードが解説とともに鎮座する。三膳氏は「ネットワークのプログラマなら必携のリファレンス書」と評する。

 静岡大学情報学部の佐藤文明助教授も同じ意見で「UNIXでネットワーク・プログラムを開発するなら,これ以上ない参考書」。佐藤助教授によると,研究室の学生の間でも人気が高いという。

リファレンス本はどれにする?

インターネット標準クイックリファレンス
著者:野坂昌己
出版:オライリー・ジャパン
ページ:521ページ
価格:4500円
ISBN:4-900900-88-5
インターネットワーキング技術ハンドブック 第2版
原題:Internetworking Technologies Handbook, Second Edition
著者:ケヴィン・ダウンズほか
監修:シスコシステムズ
出版:ソフトバンク パブリッシング
ページ:756ページ
価格:5800円
ISBN:4-7973-1017-0
ポイント図解式インターネット RFC事典
編集:マルチメディア通信研究会
監修:笠野英松
出版:アスキー
ページ:1061ページ
価格:9500円
ISBN:4-7561-1888-7

 インターネットやTCP/IPの開発に携わるエンジニアはどうだろうか。ヤマハでルーターの開発に従事する平野尚志氏は「リファレンスは書籍ではなく,RFCの原文を読むのが原則」という。NECネットワークスでルーター・ソフトウエアを開発する石橋博樹氏もほぼ同意見。ただ,石橋氏は,「TCP/IP Illustrated(『詳解TCP/IP』の原書)にはときどき目を通す」という。

 石橋氏のように自分が技術を学ぶときに使った参考書をその後もリファレンスとして利用するエンジニアは多い。使い慣れた本ならどこに何が載っているか,見当がつくからだ。ちなみにこうしたリファレンス本として,よく使われるのは,やはりカマー本や詳解TCP/IP,TCP/IPバイブル,マスタリングTCP/IPといったあたりである。

 これ以外に使う本を挙げてもらったところ,以下のような書籍があった。『インターネット標準クイックリファレンス』『インターネットワーキング技術ハンドブック 第2版』『ポイント図解式インターネットRFC事典』の3冊である。いずれも専門から少しずれる技術に関して内容を確認したりする事典として使うようだ。

 最初の『インターネット標準クイックリファレンス』はA5判大のコンパクトな本で,TCP/IPのポート番号のようによく使う数値表をまとめている。こうした数値はよほどよく使うもの以外は覚えていないので,こうした本が役立つのである。

 2番目の『インターネットワーキング技術ハンドブック』は,相互接続技術の概要を網羅的に解説した本だ。シスコシステムズが監修しており,同社の製品を扱うときに事典のように使うことを目的としている。一つひとつの技術に関する解説は少ないが,要領よくまとまっており,概要を理解するのに便利だ。

 3番目の『ポイント図解式インターネットRFC事典』は主なRFCの内容を日本語で解説した本である。単なる翻訳から一歩踏み込み,解説は技術の概要に絞っている。詳細説明を省く代わりに,図版などを使って要点を理解しやすいように工夫している。英語の苦手な読者が,RFCの原文から必要な情報を探したり,内容を理解するための手助けになる。