波長の長い電波は放送用,短い電波は通信用

 周波数が異なる電波は,その性質に合わせた用途に使われています。それでは,もう一歩進んで電波の波長と用途の関係を見てみましょう。

 波長が1k~10kmと長い長波は,地球の丸みに沿って非常に遠くまで届きます。この特徴を生かして,船のための無線標識などに使います。

 次に波長が長い中波(100m~1km)や短波(10~100m)は,ラジオ放送に使われています。これらの電波は,地球全体を覆っている「電離層」と呼ぶイオンと電子の層で反射します。さらに,短波は地表面でもよく反射するので,地球の裏側でも受信できます(pict.2[拡大表示])。

 短波より波長が短い電波は,一般のテレビ放送に使われています。周波数でいうと,100M~200MHzの電波(VHF帯の一部)です。このような周波数の高い電波は電離層を突き抜けてしまうので,ラジオのように遠くまでは届きません。また,建物などで反射した電波が,少し遅れて受信されることで,少しずれた複数の映像がテレビに映ることがあります。これがいわゆるゴースト現象です。

 携帯電話で使われる電波は,800M~2GHzと,もっと周波数が高くなります。こうした電波は,直進する性質がさらに強くなります。このため,ビルや丘陵の陰になると電波が弱くなったり,ビルの壁などで反射した電波が集まって逆に強くなったりして,電波の強さにムラができやすくなります。

 さらに周波数が高い,数GHz以上の電波はマイクロ波と呼ばれています。雨や霧の影響を受けやすくなるため,長距離の通信に利用するには途中で何回も増幅する必要があります。しかし,衛星通信や衛星放送では,電波は空気の層を垂直に通るのであまり減衰しません。実際に,衛星放送(BS放送)では12GHzという高い周波数を使っています。

 また,こうした周波数の高い電波は,出力を小さくすると遠方までは届かないので,無線LANやETC(有料道路の料金を自動的に徴収するシステム),Bluetooth(ブルートゥース)などに使われています。