信号を伝送するには,銅線や光ファイバのようなケーブルを使わない方法もあります。電波で信号を送る無線通信です。いちいちケーブルを引く必要がないので簡単に導入できますが,その使い方には工夫が必要です。

離れた2地点の間で電波を飛ばす

 電波を送信したり受信したりするのがアンテナです。基本的には金属でできていて,高周波の電気信号を流すと,電波を空中に飛ばします。そうして空中を伝わった電波を,受信側のアンテナが受け取ります。

 一番簡単なアンテナは,ただの金属の棒です(pict.1[拡大表示])。アンテナから出た電波は360度すべての方向に広がって伝わります。携帯電話や放送のように受信者がどこにいるか特定できない場合に,こうしたアンテナを使います。

 固定的な二つの地点を結ぶ伝送路として無線を使う場合は,電波の向きを相手のアンテナの方角に絞ると好都合です。そこで,アンテナのそばに反射板を置きます。こうすると,反射板が電波を反射して,特定の方向に向けて電波を送ることができます。ただし電波は,ある程度広がって伝わります。

 電波を直進させて,狙った受信アンテナだけに飛ばすには,断面が放物線となるお椀形の反射板を使います。放物線は,焦点から放射された電波を平行に反射するという性質があります。この性質を利用して,アンテナから出た電波を平行なビームに変えます。放物線は,英語で“パラボラ”(parabola)といいます。そこで,こうした反射板とアンテナを組み合わせたものをパラボラ・アンテナと呼びます。

 パラボラ・アンテナは,無線を使った中継区間の伝送に利用します。例えば,送信所のアンテナを中継所のアンテナの方向に正確に向けて,電波を送ります。中継所では,受信した電波を増幅してから,次の中継所に向けて電波を送信します。