フェーズ4 発病
彼らにできないことはない
最後は発病だ。発病に関して,まず押さえておきたいことは,「ウイルスは,パソコンでできることはなんでもできる」ということである。パソコン上で動くプログラムである以上,「ウイルスだからこれができる」とか「ワームにはこれができない」などということはまったくない。
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図9 ウイルスは“なんでもできる” ウイルスはプログラムである以上,基本的にパソコン上でできることはどんなことでもできる。 |
ダメージの大きさは人によって違う
では具体的に,発病したらどういうことが起こるのか,ユーザーが被る被害を基準に典型的な症状を確認しておこう(図9[拡大表示])。ダメージを3段階に分けるとすると,最もダメージが大きいのは,「ハードディスクをフォーマットする」,「ファイルを削除する」といった直接的な破壊行為だろう。とくに「パソコンのBIOSを破壊する」という発病症状は,パソコンが動かなくなってしまい,ユーザーによる修復はまず不可能なため,金銭的被害がとても大きい。
こうした直接的破壊行為以外に,「ファイルの改ざん」,「メールの大量送信」,「メッセージの表示」,「メモリーの浪費」など,症状はウイルスによって千差万別である。発病しないウイルスもある。
ただ,どういう症状だからどのくらい危険というのは,あくまでも一般的な基準である。
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図10 たった5行のスクリプトで重要なファイルも削除できる |
マクロだってなんでもできる
もう一つ,ウイルスの発病に関して,勘違いされやすい点がある。それは,「マクロウイルスをはじめとするスクリプト型ウイルスは,そのアプリケーションの中だけの閉じた世界で動くものだから,発病してもパソコン全体に影響するような大きな被害はない」といった話である。しかし,これは大きな間違いだ。マイクロソフトのOffice製品のマクロ言語など,ウイルスが対象とするスクリプト言語は,アプリケーションの枠を超えてどんな操作でもできるようになっているものが多い。例えば,システムに関連するファイルを削除するようなことも,ほんの数行のコードで簡単に実現できてしまう(図10[拡大表示])。