ネットワークは,多数の情報信号を送ることを想定して作られています。その想定以上に大量の通信が加わるとどうなるのでしょうか。ネットワークの種類によって,引き起こされる現象が違います。電話網では端末同士が接続できなくなります。一方,インターネットでは遅延が大きくなって通信の品質が低下します。

電話網ではつながらなくなる

 規模が最大のネットワークは電話網です。世界中にある電話機やファクシミリといった端末同士をつないでいます。日本国内だけでも,約6000万の端末があります。端末同士は,交換機と伝送路を介して情報をやりとりしています。

 すべての端末が同時に通信する確率は極めて小さいので,それに合わせて回線数を設けるのは不経済です。実際の電話網では,普段のトラフィック(通信量)を十分に通せる分の回線数しか用意していません。トラフィックが増えて,ある地点間を結ぶ直通の回線数が足りなくなると,直通回線だけでなく迂回ルートを使って伝送するようにしています。

 通常はこれで問題なく通信できますが,予想を超えた大量のトラフィックが発生すると,用意されている回線数では足りなくなってしまいます。これが「輻輳ふくそう」という現象です。全体の回線数をオーバーした分はつながりません(pict.1[拡大表示])。回線数をオーバーしなくても,限界に近づくと,空いている回線を探すのに時間がかかってつながりにくくなります。

 携帯電話でも,携帯端末と基地局を結ぶ無線区間のチャネル数が決まっているので,一カ所に大勢が集まって携帯電話をかけようとすると,チャネル数が不足してつながらなくなります。

 回線に余裕があっても,一度に大量のトラフィックが集中すると,電話がつながらなくなる場合があります。災害や大きなイベントなどがあると,大勢の人が一斉に電話をかけようとします。すると,回線を順番につないでいく交換機のコンピュータは,処理が追いつかなくなってパンクしてしまいます。こうしたときには,一部だけを受け付けるようにするなどの規制をします。