図1 中古パソコンをそのまま流用すると「名前」の重複が起こる
この禁じ手を破って一番起こりやすい“事故”が名前の重複だ。Windowsネットワークの場合,ネットワークに接続されたコンピュータを「コンピュータ名」で識別する。同じ設定で2台のパソコンをLANに接続しようと試みると,名前が重複するためあとから起動したマシンは接続できない。
 どんなネットワークも,送信元と相手先がわかるようにアドレスがある。Windowsネットワークは「コンピュータ名」でお互いを識別するし,IPネットワークならIPアドレスがある。この基本がわかっていれば,一つのコンピュータ名やIPアドレスを複数のマシンに割り当ててしまうと,何かまずいことが起こりそうだという予想がつく。

 だが,一般ユーザーの中にはアドレス重複に対する配慮がない人もいる。実際インテグレータは,「接続できないというトラブルがあったとき,まず最初にアドレス重複を疑う」という。

同じ名前ではLANにつなげない

 アドレスが重複するとどうなるのだろう。まずWindowsネットワークの場合を考えてみる(図1[拡大表示])。Windowsネットワークでは「コンピュータ名」でマシンを識別する。一つのLAN上に同じコンピュータ名は一つだけしか許されない。違うワークグループに所属していても重複は許されない。アドレスが重なると,あとから参加を試みたマシンが接続を拒否される。拒否されたコンピュータはWindowsネットワーク上の資源(ファイル・サーバーや共有プリンタ)が使えなくなる。

 Windowsネットワークにはコンピュータ名の重複を見つけるしくみがあるからだ。コンピュータ名を管理するコンピュータがネットワーク上にあり,各クライアントは起動時にその管理マシンに自分の名前が使えるかどうかを確認する。この確認作業の段階でコンピュータ名が重なっていることが見つかり,エラー・メッセージが表示される。

マシン入れ替えがトラブルの引き金

 ところで,なぜ同じコンピュータ名のマシンが2台存在してしまうのか?

 典型的なパターンは中古マシンの再利用だという。

 シナリオは次のようなものだ。あなたが新しいマシンを購入したとしよう。たいていの場合,ネットワーク関連の設定は前のマシンと同じにする。こうしておけば,以前と同じようにネットワークに接続でき,ファイル・サーバーやプリンタを使えるようになる。

 問題はこのあと。「さて,この古いパソコンもまだ十分使えるから,アシスタントに使ってもらおう」と考えたら,そこに落とし穴がある。古いパソコンのコンピュータ名やIPアドレスを付け直すことを忘れてしまうことがあるからだ。再設定しなければ,重複アドレスが生まれてしまう。

 翌朝,あなたが出社する前にアシスタントがパソコンの電源を入れてしまったら,あなたのニューマシンはLANに参加できなくなる。

IPアドレスの重複はもっとまずい

 コンピュータ名の重複はネットワーク資源が使えないというわかりやすいトラブルにつながるので比較的発覚しやすい。これに比べるとIPアドレスの重複は,ときとしてすぐにはユーザーが気づかないこともある。そして,より大きなトラブルの火種になりかねない。

 IPアドレスが重なると起動時にやはり警告が出る。この点はコンピュータ名が重なったときと同じだ。違うのは,あとから起動した方のマシンも,そのまま使えてしまえること。実際はTCP/IP機能が自動的に解除されているのだが,NetBEUI(ネットビューイ)という別のプロトコルが動作していれば,サーバーやプリンタを利用できるのだ。

 こうした問題があるので中古マシンを部内サーバーに転用すると,部内全体に影響を与えるトラブルに発展しかねない。何らかの事情でサーバーを止めている間に重複アドレスが設定されたマシンの電源が入ってしまうと,あとから起動したサーバーのTCP/IP機能が解除される。この結果,TCP/IPでアクセスしているユーザーはサーバーが使えなくなってしまう。