Bluetoothや無線LANを置き換える可能性がある無線通信技術が,いま注目を集めている。「UWB」(ultra wideband)と呼ばれる技術である。UWBは,ウルトラ・ワイドバンドという名称のとおり,1GHz幅以上という広帯域を使う最先端の無線通信技術。無線ながら数百Mビット/秒以上という通信速度を実現する。

 UWBの特徴は,これまでの無線通信と違いデータ通信に搬送波を使わないこと。従来の無線通信は通信時に常に搬送波(電波)を出し続けるので,それだけ電力を消費する。それに対してUWBは,瞬間的な鋭い波形の電波──つまりインパルス──に直接0や1を割り当てて送り出す。必要なときだけインパルスを出すので,消費電力をとても小さく抑えられる。

 UWBで高速なデータ伝送が可能となるのは,このインパルスの幅を1ナノ秒以下と小さくできるから。これなら,数百M?1Gビット/秒以上の通信も夢ではない。ただし,インパルスを飛ばすには広い周波数帯域が必要になるのである。

 すでに米国では,連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が屋内使用に限定して,3.1G?10.6GHzの周波数帯域をUWBの通信用に開放済み。IEEE802委員会でも,PAN(personal area network)の基盤技術としてUWBを検討対象として取り上げている。早ければ年内にUWB対応チップを出荷するというベンチャー企業も現れた。

 UWBの実用化に向けて動き出した米国に対して,日本ではまだこうした動きは見えない。日本でもUWBの実用化が待たれるが,それにはまず,周波数の開放が必要となる。

高橋 健太郎