周囲をぐるりと海で囲まれた島国の日本。陸続きでケーブルを渡せないので,海外と通信するために海の底にケーブルをはわせてきた。今では,日本の周りの海底はケーブルだらけという。では,そうした海底ケーブルは,どんな手順で敷いたのだろうか。

 海底ケーブルを敷く工程は大きく3ステップからなる。(1)机上でのルート仮決定,(2)現地調査によるルート本決定,(3)ケーブル敷設船を使った工事──である。

 最初のルートの仮決定では,海図などを参考に,水深,底の質,海域に問題がないルートを探し出す。水深8000m以上の海溝はケーブルが水圧に耐えられなくなるし,底が岩ばかりで急激に地形が変化しているとケーブルが擦り切れる危険性がある。また,海底火山があったり軍の訓練海域,遺跡などは避けざるを得ない。公海上はルートを自由に決められるが,領海を通すには各国の許可も必要になる。

 次の現地調査では,実際に(1)で決定したルートに沿って船を走らせ,ソナーを使って海底の地形を細かく調べる。現地調査で正確な地形のデータを収集し,問題が見つかった個所はルートを変更する。こうして最終的なルートを決める。ルートが決まれば正確なケーブル長が決まるので,ケーブル・ベンダーに,光ファイバに外装を施した海底ケーブルを製造してもらう。途中に,弱まった光信号を増幅する中継器もとりつけておく。

 そしていよいよ工事。まず,海底ケーブルをケーブル敷設船に積み込む。ケーブル敷設船とは,海底ケーブルを工事するための特別な船。波の影響を考慮して,船の位置と方向を微調整しながら敷いていく。工事は,太平洋を横断する場合で数カ月かかる。地上のネットワークへ延ばす(陸揚げと呼ぶ)部分だけは,人手による作業になる。

 工事が終わって無事開通しても,底引き網や船が下ろしたイカリで引きずられて切れる事故が,ときどき起こる。その度に,海底ケーブルを一度船の上に引き上げて修理することになる。秋から春にかけては漁が盛んな季節。その影響から,海底ケーブルの切断事故が起こりやすい。海底ケーブルにとってはこれからが多難な季節になる。

高田 学也