NTT東西のフレッツ・ADSLと契約すると,「フレッツ接続ツール」と呼ぶパソコン向けのソフトが配られる。これがないと,フレッツ・ADSLでインターネットに接続できない。なぜなら,インターネット接続事業者(プロバイダ)のユーザー認証を受けることや,プロバイダからIPアドレスを通知してもらうことができなくなるからだ。

 このフレッツ接続ツール,その実体はPPPoE(PPP over Ethernet)というプロトコルのクライアント・ソフトである。ユーザー認証もIPアドレス取得も,このPPPoEが実行する。PPPoEはADSLとセットで使われることが多いものの,ADSL専用のプロトコルではない。実際,2001年8月から始まったNTT東西のFTTH(fiber to the home)サービス「Bフレッツ」もプロバイダ接続の方法としてPPPoEを採用する。

 PPPoEクライアントを使うとユーザー認証とIPアドレス取得ができる。具体的には,プロバイダが用意するアクセス・サーバーとデータをやりとりし,自分がそのプロバイダの正規ユーザーであることを承認してもらったり,プロバイダからIPアドレスを割り当ててもらったりする。ただ,こうした仕事をクライアント・ソフト内部でこなしているのはPPPoEではない。実は,PPP(point-to-point protocol)と呼ぶプロトコルが実行している。

 では,PPPoEとPPPはどのような関係にあるのだろうか。実はPPPoEは,LAN環境でPPPを使うためのルールを規定しただけのプロトコルである。ユーザー認証やアドレス通知はPPPが処理している。つまりPPPoEクライアントとは,LAN環境でPPPを実行するためのソフトなのである。

 今後ブロードバンド・インターネットの主要技術になりそうなPPPoEであるが,現時点で利用するときにはちょっとした注意が必要になる。接続先サーバーの指定機能を使わないようにしなければならないことだ。

 PPPoE仕様を見ると,接続先のPPPoEサーバーを明示的に指定するために,Service-NameとAC-Nameを指定できるようになっている。実際,PPPoEクライアント・ソフトも,PPPoE対応ブロードバンド・ルーターも,これらを設定するための画面を用意しており,うっかり設定しそうになる。だがフレッツ・ADSLでは,これらの項目を空欄にしておかないと本来のサーバーと通信できず,サービスを利用できなくなる。

 もうひとつの注意点は,複数のマシンで同時にインターネットへアクセスしたいときは,PPPoE対応ルーターが必要になること。パソコン上で動作するPPPoEクライアント・ソフトを使う形態では,同時に利用できるマシンは1台だけになる。これからルーターを購入するなら,PPPoE対応かどうかをチェックするのがいいだろう。

山田 剛良