9月に入って,最大8Mビット/秒のADSLサービスが続々と始まった。料金差はあまり大きくないので乗換えを考えるユーザーも多いことだろう。ただし,契約を変えただけでは,最大速度で使えないかもしれない。既存の家庭向けルーターの中には,処理能力が8Mビット/秒という速度に追いつけないものもあるからだ。

 家庭向けのブロードバンド・ルーターは,ADSLモデムとも家庭内LANとも10Mあるいは100Mのイーサネットで接続する。少なくとも10Mビット/秒で通信する能力はあるわけだ。それなのに,なぜ8Mビット/秒で中継できないのだろう。

 実は,ルーターの処理能力は単位時間当たりに中継できるパケット数で決まる。10Mビット/秒の速さで送受信することと,受け取ったパケットを中継するために処理することは別の話なのだ。

 既存の家庭向けルーターの処理能力は,だいたい1M~5Mビット/秒程度である。これは,ISDN回線の128kビット/秒やADSL回線の1.5Mビット/秒という速度に合わせてルーターを作り込んでいたからだ。性能が低いルーターを使うと,ルーターがボトルネックになることは避けられない。

 最大速度を利用できるかどうかのポイントはもう一つある。どれだけの数のユーザーが同時にその回線を利用するかどうかというのがそれ。ユーザーが増えると短いパケットが増えてしまうので,それだけ単位時間あたりに処理しなければならないパケット数が増えてしまうからだ。

 こうしたことから,高速ADSL回線のうまみを引き出すにはルーター選びが重要になる。少なくとも,回線速度が1Mビット/秒を超えたらルーターの性能をチェックしよう。

半沢 智