信号を伝送する場合,伝送路を伝わるのにかかる時間が細かく変化したり,雑音が加わったりするため,信号は受信側に揺らぎながら到着します。この揺らぎの大きさは,通常,伝送距離に比例して増えていくので,とくに長距離伝送では大きな問題になります。

揺らぎにはジッターとワンダーがある

 ディジタル伝送では,パルスを一定の時間間隔で送信します。伝送路を伝わっていくうちに雑音などの妨害を受けるため,受信したパルスの間隔は一定ではなく揺らいでいます。

 このパルスの揺らぎが大きくなると,ディジタル信号の“1”と“0”を判定するタイミングがずれて,符号誤りを起こす原因になります(pict.1[拡大表示])。また符号誤りにはならなくても,アナログ信号をディジタル化して伝送する場合には,受信側で標本化周期(本誌9月号第5回)が揺らいでしまうので,アナログ信号を復元すると元の波形からずれてゆがみが生じます。そうすると,音の音色が変わってしまったり,テレビ映像が乱れたり色ずれが起こったりして,品質が低下してしまいます。

 パルスを伝送するときに起こる揺らぎは,大きく分けて2種類あります。揺らぎの周期が短いものを「ジッター」,周期が長くてゆっくり揺らぐものを「ワンダー」と呼んで区別しています。

 受信側でこのジッターやワンダーを取り除いて,品質のよい信号を再生するには,送られてきたパルスをいったんメモリーに蓄積し,一定間隔のタイミング信号(クロック)で取り出すようにします。

 このタイミング信号も伝送路で送られてくるので,やはりジッターやワンダーがあります。そこで,位相を同期させる発振器を使って正確なタイミング信号にします。

 この方法でジッターは十分小さくできますが,ワンダーはなかなか取り除けないのでやっかいです。ただし,一般に,周期がきわめて長いゆったりとしたワンダーはそれほど品質に悪影響を与えないので,周期が比較的短いワンダーを除去すれば十分です。