高速伝送には広帯域が必要

 最近,画像情報など情報量の大きいディジタル・データを送る機会が多くなり,高速伝送が求められています。例えば,テレビの映像信号をディジタル伝送するには,数Mビット/秒という伝送速度が必要です。この伝送速度とは,1秒間に送るビット数のことです。

 ディジタル信号はパルスという特別な波形で送られます。1秒間に伝送できるパルスの最大数は,伝送路が伝えることのできるもっとも高い周波数の2倍であることが,理論的に証明されています。実際にはこれより少なく,1Hz当たりパルス1個程度が普通です。

 周波数が高いほど,短い時間に多くのパルスを送ることができるので,ディジタル信号は多くの情報を伝送できます。ただし,周波数が高いディジタル信号は低い周波数成分も含んでいるため,ディジタル信号の伝送速度を上げるには,広い周波数帯域が必要になります。このため一般には,高速伝送と広帯域伝送は,同じ意味で使われています。

 一般に,1個のパルスは1ビットに対応するので,伝送速度はその伝送路の帯域とほぼ同じ値になります。しかし,帯域が限られている場合,1パルスで数ビットを表す方法を組み合わせることで高速伝送できます(pict.2[拡大表示])。

 1パルスで複数のビットを表すためには,パルスの電圧値を変化させ,パルスが複数の状態をとれるようにします。こうすると,複数のビットをそれぞれの電圧値に割り当てることができます。

 こうした方法は,銅線を使ったディジタル伝送などに使われています。1個のパルスが表すビット数が多ければ多いほど伝送速度は高くなります。逆に,伝送速度が同じ場合,1パルス当たりのビット数を増やせば,必要な伝送路の帯域は狭くて済みます。