多元接続には三つの方法がある

 ある周波数帯域を利用して多数のチャネルを作るには,多重化と同じように,周波数で区別する方法,時間で区別する方法,符号で区別する方法の三つがあります(本誌2000年8月号,連載第4回参照)(pict.2[拡大表示])。

 周波数帯域を複数に分割して多数のチャネルを作り,それを利用して多元接続をするのが「FDMA」(周波数分割多元接続)です。この方式は以前,アナログ携帯電話で使われました。

 チャネルごとの信号を順番に送ることで多数のチャネルを設けて,それを使って多元接続をするのが「TDMA」(時分割多元接続)です。時間を飛び飛びに利用するのは難しいように思われますが,同期さえとっておけば比較的簡単で安価な電子回路で実現できます。一方,FDMAでは周波数を正確に合わせるために高精度で高価な部品が必要です。このため,TDMAの方がFDMAよりも安上がりです。TDMAは,現在のディジタル携帯電話やPHSで使われています。

 この二つの方法に対して,最近登場したのが「CDMA」(符号分割多元接続)です。これは,符号で信号を区別することで多数のチャネルを作り出し,多元接続を実現します。周波数や時間を区切ってチャネルを作るのと違い,信号の帯域や伝送速度を自由に選べるので,多彩な情報を扱う将来のマルチメディア通信に最適です。現在でも一部のディジタル携帯電話で使われていますが,次世代の携帯電話システム「IMT-2000」で本格的に使われることになっています。