今回は,多くの利用者で少数の回線を使う技術「多元接続」について学びましょう。この技術は携帯電話でよく使われています。携帯電話は,無線による回線を使って音声やデータをやりとりします。こうした回線は複数あり,一つ一つの回線を「チャネル」といいます。多元接続は,共通に利用できる多数のチャネルの中から,空いているチャネルを探し出し,それを捕らえて利用する技術なのです。

必要な時だけチャネルを使う

 通信に使うことができる電波の周波数には限りがあるので,ある周波数帯域の電波をなるべく多くの人が利用できるようにすることが大切になります。このためには,まず与えられた周波数帯域の中にできるだけたくさんのチャネルを作ります。そして,利用者が通信するときだけ一つのチャネルを選んで使うようにします。こうすれば,ある利用者の通信が終わるとチャネルが空くため,別の利用者は空いたチャネルで通信できます。こうしたチャネルの利用法が多元接続です(pict.1[拡大表示])。

 携帯電話を例に説明しましょう。携帯電話が送り出す電波は基地局が受信します。基地局は制御局に有線でつながっており,さらに制御局は有線の電話網につながっています。通話相手が携帯電話の場合は,信号は再び相手側の近くの基地局で電波に変えられ,携帯電話に送られます。多元接続を利用しているのは,携帯電話と基地局の間の無線通信の区間です。

 利用者がどのチャネルを使うかは,基地局とつながっている制御局が決めます。制御局は空いているチャネルを見つけて,基地局と携帯端末に割り当てます。PHSなどは,携帯電話と基地局が連携して,自分たちで空いているチャネルを探し出します。