音声やテレビ映像はアナログの情報です。これをディジタルのネットワークで伝送するには,アナログ信号をディジタル信号に変えなければなりません。この操作は,符号化と呼びます。逆に,ディジタル信号を元のアナログ信号に戻す操作を,復号化と呼びます。

標本値を取り出して符号に直す

 アナログ信号の波形は,いろいろな電圧値をとりながら連続的に変化します。これを「1」と「0」という2つの電圧値しかとらないディジタル信号に変換するには,まずアナログ信号の電圧を一定時間ごとに測って,飛び飛びにします。これを「標本化」と呼び,一定時間ごとに取り出した電圧値を「標本値」と呼びます。

 このような処理を施すと,音や画面がブツブツに途切れる気がしますが,人間にわからないくらい短い時間で区切れば問題ありません。時間間隔をある程度細かくすれば,アナログ信号が持っていた情報は失われないのです。

 アナログ信号には,いろいろな周波数の信号が混ざっています。この中でもっとも高い周波数の2倍の周波数でアナログ信号の電圧値を取り出すと,元のアナログ信号を復元できると証明されています。これを「標本化定理」と呼びます。

 周波数が高くなると波形が細かくなります。波形のもっとも細かい部分に合わせて十分多くの標本値を取れば,元の波形を再現できることを,この定理は示しています。

 次に,この標本値を「1」と「0」の符号の組み合わせで表します。これを符号化と呼びます。この符号化の手順を説明しましょう(pict.1[拡大表示])。まず,アナログ信号がとる電圧の範囲(最大振幅)を決めておきます。この最大振幅の1/2と取り出した標本値の大小を判定します。次に,1/2の1/2,すなわち最大振幅の1/4と比較して,大小を判定します。さらに,1/4の1/2,すなわち1/8と比較します。つまり,大きさを比較するものさしを半分にして,測っていくわけです。こうした操作を何回か繰り返すことで,最終的に標本値は非常に小さい電圧と比較することになります。このため,元の信号の電圧の標本値と符号化した電圧との差は,ほとんどありません。判定の度に,大きいか小さいかをそれぞれ「1」と「0」で表せば,判定の回数と同じビット数のディジタル信号が得られます。