一般にダイヤルアップ環境では,ユーザーが取得したドメイン名(ホスト名)でWebサーバーを運用するのが難しい。ダイヤルアップするたびに,割り当てられるIPアドレスが変わってしまうことに原因がある。そこで自分のドメイン名でWebサーバーを立ち上げるときは,固定的にIPアドレスを割り当ててくれるサービスを選ぶことになる。ところがダイナミックDNSサービスを使うと,固定IPアドレス・サービスを使わなくても自宅のWebサーバーを自分のドメイン名で公開できる。

 ダイナミックDNSサービスの説明をする前に,ホスト名とIPアドレスの関係をおさらいしておこう。両者の関係はDNSサーバーというデータベース・サーバーが対応づけている。WebブラウザはDNSサーバーにホスト名を問い合わせ,対応づけられたIPアドレスを知らせてもらい,そこにアクセスする。つまり,DNSサーバーにホスト名とIPアドレスの対応関係が登録されていないと,ホスト名ではアクセスできなくなる。

 通常,DNSにホスト名とIPアドレスの対応関係を登録するのは手作業である。IPアドレスが頻繁に変われば,そのたびにDNSへの登録作業が発生するので運営上の負荷は大きくなる。

 ダイナミックDNSを使うと,DNSへの登録作業を自動実行できる。パソコンが立ち上がったタイミングで,「www.nikkeibp.co.jpのIPアドレスは192.168.0.1です」といったアドレス情報をDNSサーバーに送るからだ。このしくみがあれば,最新のIPアドレスをDNSに登録できるようになるため,IPアドレスが変わるダイヤルアップ環境でもホスト名でWebサーバーを立ち上げられるようになる。

 ダイナミックDNSサービスは,ダイナミックDNS対応のDNSサーバーを運用し,それをインターネット・ユーザーに開放したサイトのこと。ダイナミックDNSの機能を持つDNSサーバー・ソフトとしては,BIND(もっとも普及しているDNSサーバー・ソフト)のバージョン8以降や,Windows2000ServerのActive Directoryなどがある。

 ダイナミックDNSサービスを現在提供している事業者は,ほとんどが米国の事業者である。英語に不安がある人はちょっとたじろぐかもしれないが,申し込みはWebページ上で数分で完了できる。実際に登録してみたが,記入に悩むような項目もなく,5分とかからずダイナミックDNSの利用をスタートできた。

 このサービスを使う場合,ダイナミックDNSサーバーにアドレス情報を伝えるための専用クライアント・ソフトが必要になる。Windows対応版,Macintosh版,フリーUNIX対応版などが開発されており,多くは無料でインターネット経由で入手できる。検索サービスで探すと,さまざまなダイナミックDNSサービスに対応する汎用的なDNS設定用クライアント・ソフトが見つかるはずだ。そしてこのクライアント・ソフトをWebサーバーに常駐させる。こうしておけば,定期的(間隔は変更可)に自身(Webサーバー)のIPアドレスを調べ,それをダイナミックDNSサーバーにアップロードしてくれる。

 自動的にDNSサーバーの内容を書き換えるというのはなかなか便利そうだが,セキュリティ上の問題はないのだろうか。こちらの面では,データ変更時にはID/パスワードに基づいたユーザー認証でガードしているサイトが多い。これで最低限のセキュリティを守っているわけだ。

 「Webサーバーを自分で運用してみたいけど,DNSサーバーを立ち上げたり,固定IPアドレスの使えるプロバイダに変更するのはちょっと面倒」・・・。こういう人は,ダイナミックDNSサービスを試してみるのはいかがだろうか。

高田 学也

関連リンク
ダイナミックDNSの紹介ページ(事業者一覧がある)
Windows向けクライアント・ソフトの紹介ページ(Mac用やUNIX用のリンクもある)