ADSLに代表されるブロードバンド・サービスの急激な普及で,インターネットに流れるデータは日々増え続けている。そんなインターネット接続事業者(プロバイダ)間の膨大なトラフィックを中継する役割を果たすのが「IX」(Internet exchange)である。IXも,インターネットの成長とともに変化してきた。今回はIXの歴史について見ていこう。

 IXは,プロバイダを1カ所で効率良く相互接続するための設備である。

 日本最初のIX「NSPIXP-1」ができたのは1994年のこと。産学協同の研究プロジェクトであるWIDEプロジェクトが,プロバイダ間の相互接続時に発生する諸問題を研究するという名目で実験的に開設した。場所は,東京・神田にある岩波書店の地下。そこに10Mビット/秒のイーサネット用のリピータ・ハブを置き,各プロバイダのルーターをつないだのが始まりである。その後,トラフィックの急増に対応するため,IXの設備は常に強化されてきた。1997年にWIDEは,プロバイダが数多く集まるデータ・センターがあるKDDI大手町ビルに100Mビット/秒のFDDI対応LANスイッチを導入し,新しいIXを立ち上げた。これがNSPIXP-2(現在のdix-ie)である。

 現状のIXの基本構成はこのときから変化していない。つまり,IXの正体は,データ・センターなどに置かれたLANスイッチなのである。

 以降,1997年11月に日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)が商用のIXサービスを開始。このほか,インターネットマルチフィードのJPNAPや各地域の地域IXなどが相次いで登場している。

 さらに2003年には,NSPIXP-2に10Gビット・スイッチが導入され,当初は大手町の1カ所だったIXを都内の6カ所に分散させた。JPIXも,FDDIスイッチ,ギガビット・イーサネット・スイッチと増強を続け,2003年には10Gイーサ対応のLANスイッチを導入した。

 10Mビット/秒を共有するリピータ・ハブから10Gビット/秒を専有できる10Gイーサネット・スイッチへ――。わずか6年あまりで,IXの処理能力は1000倍以上に拡張された計算になる。

(高橋 健太郎)