イーサネットで使う一般的なLANケーブルは,「シールド」がないUTP(unshielded twisted pair)ケーブルである。それに対して,通信用の銅線を銅で編んだ網やアルミはくで「シールド」したSTP(shielded twisted pair)ケーブルもある。ノイズの影響を考えるならSTPを使うほうがよさそうに思えるが,そう簡単な話ではない。今回は,STPケーブルを効果的に使う方法を見ていく。

 ケーブルにシールドを施すことで,外部からの電気的なノイズの影響を遮断できる。ノイズ源からの静電気や電磁波を受け取ったシールドは,静電気を集めたり電流を流すことでノイズを打ち消そうとするからだ。

 しかし,より対線などの銅線が単にシールドで囲ってあっても,ノイズを打ち消す効果は少ない。ノイズを受けたシールドには電気が流れる。電気の逃げ場がないと,シールドに電気がたまったままになる。この電気の量が大きくなるとシールド自体がノイズ源になってしまい,中の銅線に悪影響を及ぼすことがあるのだ。

 こうした状況を避けるために,STPのシールドはきちんとアース(接地)を取らないと機能しない。ただ,STPのシールドにアースを取るのも,そう簡単ではない。

 なぜなら,機器側のコネクタがアース付きになっているとは限らないからである。イーサネット機器のコネクタはアース付きになっていないものが多い。アース付きの金属製コネクタに見えても,実はプラスチックに金属でメッキしてあるだけのこともある。

 さらに,金属製のコネクタが付いていても,装置のアース端子をきちんと建物のアース端子につながなければならない。シールドは,専用のアース端子を使って建物のアース設備につなぐのが理想。しかし,実際のネットワーク機器やパソコンには専用のアース端子はないことが多い。

 電源プラグのピンの片側がアースを兼ねている場合がある。ただし,配線の途中でアースとそうでない部分が入れ替わっていることもある。こうなると,アースしたつもりなのに商用電源の電圧がかかってしまいかねないので注意が必要である。

阿蘇 和人

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