最近,「ジャンボ・フレーム」という機能をうたう低価格のギガビット・イーサネット製品の出荷が目立ってきた。でも,ジャンボ・フレームという言葉を聞いたことがない人もいるかもしれない。そこで今回は,ジャンボ・フレームのしくみとメリットを探ってみた。

 ジャンボ・フレームとは,1500バイトを超えるデータを含んだMACフレームのことである。イーサネットの標準仕様では,1個のフレームに入れられるデータの最大サイズは1500バイトと決まっている。その上限を取り払い,1500バイト以上のデータを一つのMACフレームでやりとりする機能がジャンボ・フレーム機能である。これまで企業向けのギガビット・イーサネット・スイッチなどの一部に搭載されてきた機能である。

 ジャンボ・フレームのメリットは,スループットの向上が見込めること。その理由は二つある。

 一つは,機器がフレームを処理する際の負荷を抑えられるから。LAN機器はフレーム一つずつに対して,ケーブルに流れるビット列からフレームを認識し,アドレスのチェックやエラー検出,転送などの処理をこなしていく。パソコンも,1500バイトのデータごとにフレームを一つひとつ作っていかなければならない。ところが,ギガビット級の速度で大量のフレームをやりとりするとなると,処理の負荷が膨大になる。フレームのサイズを大きくすれば,処理するフレームの数を減らせるため,負荷が軽くなるのである。

 もう一つの理由は,データの転送効率が良くなるから。イーサネットのフレームには,ヘッダーなど実データとは関係ない「オーバーヘッド」が付く。ジャンボ・フレームを使うと,このオーバーヘッドの比率を小さくできるので,結果的に転送効率を上げられる。

 実際の効果は,パソコンのスペックや通信の種類などによって異なるが,FTPのようにサイズの大きなファイルをやりとりする場面で大幅なスループットの向上が期待できる。

 ただし,ジャンボ・フレーム機能を使うときは注意も必要だ。

 まず,通信経路にある機器すべてがジャンボ・フレームに対応していなければならない。もし,途中のLANスイッチなどが対応していない場合,そのフレームは規格外として破棄される。

 また,対応するデータ・サイズは機器メーカーごとにまちまちである。扱えるサイズの限度を超えたフレームがきた場合もフレームを破棄する。そのため,扱えるデータ・サイズを事前にチェックしておく必要があるだろう。

 ジャンボ・フレームは標準仕様ではないが,ギガビット・イーサネットの能力を引き出すのに欠かせない機能といえる。今後は,低価格のLANスイッチやLANアダプタ製品への搭載がますます進みそうだ。

半沢 智