最近のブロードバンド・ルーターの価格低下はすごい。いちばん安い製品は4000円を切るのに,カタログでは70Mビット/秒を超えるスループットをアピールしている。これはひと昔前に2万円近い価格で販売されていた上位機種のスペックと同じだ。なぜ,こんなに安くできるのだろう。その秘密に迫る。

 そこでまず,4000円のルーターの中でも新しい部類に入るバッファローの「BBR-4MG」のきょう体を開けてみた。基板を見ると,部品点数が少なく基板上に余裕がある。心臓部に当たるCPUチップを除くと,あとのICチップはメモリーくらいしか載っていない。つまりBBR-4MGは,ブロードバンド・ルーターとしての機能をワンチップでまかなっているのである。

 電子回路を使う製品をコスト・ダウンする基本は,回路の集積化である。必要な機能を一つのチップに統合して部品の価格を下げ,全体のコストを下げるのだ。BBR-4MGはこの見本のような作りになっている。

 ブロードバンド・ルーターは4~5ポートのLANスイッチの機能を持つ。従来のブロードバンド・ルーター向けのCPUはスイッチ機能を内蔵していなかったので,CPUとは別にLANスイッチ用のICチップを搭載する必要があった。しかし,BBR-4MGが採用したブロードバンド・ルーター向けのチップは,LANスイッチの機能を併せ持つ。こうしたICの集積化がルーターの低価格化を支えている。

 コスト・ダウンのもう一つのポイントは,搭載されているメモリーの容量だ。4000円ルーターでは,メモリーの価格が全体のコストの中で無視できないからである。

 一般的な4000円ルーターは,ファームウエアを格納するフラッシュROMが512K~1Mバイトであるのが普通だ。CPUがプログラムを実行するために使うRAMは,2M~8Mバイトのメモリーを搭載する製品が多い。それに対してブロードバンド・ルーターの上位機種だと,多くの製品が2Mバイト以上のフラッシュROMを搭載している。RAMも16Mバイト以上の製品が少なくない。

 メモリー・サイズが小さいと,ルーターの機能に影響が出る。例えば,フラッシュROMのサイズは格納するファームウエアのプログラム・サイズに関係する。ルーターの機能が増えるとプログラム・サイズは大きくなるのが普通。コスト面の制約で搭載できるフラッシュROMのサイズが十分でなければ,それに合わせて機能を絞り込み,ファームウエアのサイズを削る必要が出てくるという。

 同じ理由で,4000円ルーターではファームウエアのアップデートで大幅に機能を追加するのはあまり期待できない。最初からギリギリのサイズのフラッシュROMを使っているからだ。機能を追加することで初期状態よりファームウエアのプログラム・サイズが大きくなるような改良は難しいのである。これも4000円ルーターの特徴といえるだろう。

山田 剛良