まずは,こちらのURL(http://www.opte.org/maps/)にアクセスして,ページの下の方にある画像を見ていただきたい。サイズを選んでクリックすると,子供の落書きのような,カラフルなクモの巣のような画像が表示されるだろう。実はこれ,インターネット全体を表した地図である。

 「インターネット地図」と言われても,具体的には何を表現しているのかわかりにくいかも知れない。この図中のカラフルな線は,インターネット上のルーター同士を結ぶ経路を示している。インターネットは無数のルーターがIPパケットを中継することで動いている。ルーター同士がつながる経路をすべて図示すれば,それはすなわちインターネット地図になる。

 この地図は,米国のネットワーク・エンジニアであるバレット・ライアン氏が独自に作成したもの。これは「Opte Project」(オプテ・プロジェクト)と名付けられた計画で,詳細はWebページ(http://www.opte.org/)で公開されている。

 インターネット地図を作る試みはほかにもあった。例えば米ベル研究所が進めていたプロジェクト。しかし,地図を作るのに6カ月もかかった。それを見たライアン氏は,1日で作れると主張し,会社の同僚と賭けをしたのが発端である。

 ライアン氏が地図作成に利用したのは,tracerouteというごく一般的なコマンドである。UNIXやWindowsなどにも標準で備わっている。このコマンドであて先IPアドレスを指定すると,そこに到達するまでに経由するルーターの情報が得られる。

 理屈で言えば,考えられるすべてのIPアドレスに対してtracerouteを実行すれば,インターネット地図が出来上がる寸法だ。

 しかし,世界中に広がるインターネットを1日で調べるのは大仕事。IPアドレスは32ビットなので,単純に計算すると2の32乗,約40億個にもなる。そこで,ライアン氏はインターネットを小さなネットワークの集合体と見なし,その小ネットワークを束ねるルーターだけを調べることにした。

 具体的には,小ネットワークの単位として「クラスC」という範囲に区分けした。クラスCとはアドレス割り当ての単位で,そのIPアドレスのネットワーク部の長さは24ビットである。

 単純に全インターネットがクラスCのネットワークで構成されているとすると,考えられるネットワークの個数は2の24乗,つまり約1700万個になる。したがって,1日で全インターネットを調べるには,1秒間に200回弱のtracerouteを実行すればよい。

 プログラムはまだ開発途中のため,この地図は作成するのに250時間ほどかかったという。しかし,プログラムを最適化することで,1台のパソコンと200kビット/秒程度の回線があれば1日で作れるとしている。プログラム完成後にはフリーで公開される予定なので,期待しよう。

高橋 健太郎

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