インターネットの奥深くには,巨大なルーターが鎮座しているという。ただ,めったに一般ユーザーの目に触れることはない。こうしたルーターはいったいどんなものなのか。今回はその正体の一端を探っていこう。

 インターネットはルーターでできた巨大ネットワークである――。こんな決まり文句を耳にした人は多いと思うが,インターネットの実際の姿を想像するのは意外に難しい。ルーターと言っても実はいろいろな種類があり,中にはめったにお目にかかれないものもあるからだ。

 一番身近なのはブロードバンド・ルーターだろう。しかし,インターネットの中核で動いているバックボーン・ルーターは,ブロードバンド・ルーターとは何から何まで大きく異なる。

 何が違うのか。まず,その大きさが違う。例えば,ルーターで有名なシスコシステムズの最上位機種であるCisco12416は,高さが約1.8mのラック搭載型で,重さは約177kgに達する。

 大きさだけではない。性能もケタ違いだ。例えばインタフェース。ブロードバンド・ルーターが備えるポートは100Mビット/秒のイーサネット用のものだが,インターネットの基幹部分では現在10Gビット/秒の回線が使われている。実に100倍の速さだ。

 つなげられる回線の数も違う。全国の拠点やほかのプロバイダなどとつなぐため,バックボーン・ルーターは多くのインタフェース・ポートを備える。さらに,すべてのインタフェースが同時にフルスピードでIPパケットを処理できるようになっている。

 つなぐ相手によってインタフェースが変わるので,インタフェースの種類も豊富だ。広域網では,600Mビット/秒,2.4Gビット/秒,9.6Gビット/秒などの光回線がおもに使われる。同じ拠点内のほかのルーターとつなぐのは, 10Gビット/秒や1Gビット/秒のイーサネットが使われることが多い。

 もう一つ,バックボーン・ルーターには大きな特徴がある。それは,ネットワークを止めないことを重視している点だ。回線やルーターそのものが壊れても大丈夫なように,主要な部品を2重化して,故障したら予備に自動で切り替わるなどの工夫がこらしてある。

 故障した部品を簡単に交換できるように,ほとんどの部品はカードの形で取り換え可能になっている。構造が複雑になるので,装置は巨大になる。消費電力や発熱量もばかにならない。高速化など最先端の技術を使っていながら使われる台数は多くないので,どうしても高価になってしまう。値段の高いものだと数億円するものもあるという。

 こうしたバックボーン・ルーターのあるおかげで,われわれは日々インターネットを快適に利用できるのである。

阿蘇 和人