日経NETWORKでは,ネットワーク・トラブルの実態を把握するためにアンケート調査を実施し,本誌読者をはじめ現場のユーザーから多くの体験談が寄せられた。その中で編集部で注目したのは,トラブル解決の「決め手」である。そこで,最終的に集まった1782例の体験談から,どのような行為がトラブル解決に結びつきやすいのかを探ってみた。

 アンケートでまず気が付いたのは,企業ネットワークと家庭ネットワークでトラブル解決に結びついた決め手が違うことだ。

 まず企業ネットワークで一番多かったのは,「pingなどのコマンドが解決の決め手になった」トラブル事例。アンケートでは,決め手となったトラブル対策のほかにトラブル発生時によく行う対策も聞いたが,ここでも「pingなどのコマンド」の項目がトップだった。つまり,企業ネットでトラブルが起こったらpingなどのネットワーク・コマンドを試してみるのが基本であり,それがそのままトラブルの解決につながる可能性が高いことがわかる。

 そのほか,「機器の取り替えが解決の決め手になった」と答えた企業ユーザーも多かった。ハブやLANスイッチといったネットワーク機器が故障するケースは多い。予備の機器を保有しておくのも実際のトラブル対策に役立つ。

 一方,家庭のネットワークで最も多かったのが,「プロバイダや事業者に問い合わせが決め手になった」という事例である。家庭ネットワークではWAN回線にからんだトラブルが多いため,ADSL事業者やプロバイダの担当者などに問い合わせなければ原因がわからないケースが多い。そのため,担当者への問い合わせが,トラブル脱出の決め手になっていると考えられる。

 またアンケートでは,普段行っている事前のトラブル対策も聞いた。企業ユーザーの回答で目立ったのは,「ネット機器のIPアドレスを控えている」,「ネットワーク構成図を作っている」など,ネットワークの構成を把握する対策が上位に入っている点。ネットワークの規模が大きくなるほど全体の構成を把握しにくくなり,トラブル発生時にその発生個所を見極められなくなる。そこで,最新のネットワーク構成を把握しておくことが重要になる。

 一方の家庭では,「OSなどにパッチを定期的に当てている」,「機器のファームウエアを常に最新にしている」という項目が上位になった。家庭のネットワークの規模は小さく,構成の変更もあまりない。そのため,今現在使っている機器やソフトの管理をしっかりしておくことが,最大の予防策というわけだ。

 以上を見てわかるように,企業と家庭では,トラブル・シューティングに有効な対策や解決につながるポイントに差がある。それぞれの場面に応じた対策やポイントを頭に入れておけば,トラブルが発生したときに効率よく対策が講じられるようになるだろう。

半沢 智