IPアドレスは,1台のパソコンに一つだけしか割り当てられないわけではない。1台のパソコンに複数のIPアドレスを割り当てることもできる。

 しかし,1台のパソコンに複数のIPアドレスを割り当てると,いったいどのような御利益(ごりやく)があるのだろうか。たしかに,クライアントとして使っているパソコンに,複数のIPアドレスを割り当ててもあまり意味はない。しかし,サーバーに割り当てるといろんな御利益がある。

 例えば,複数のサーバーを1台に統合するとき。サーバーを1台に統合するとIPアドレスが変わってしまうので,DNSサーバーへの登録情報などを書き換えないと,クライアントからサーバーへうまくアクセスできなくなってしまう。こんなとき,1台のサーバー・マシンに複数のIPアドレスを割り当てられれば,統合前と同じIPアドレスで運用が続けられ,DNSサーバーなどの設定を変更する必要がない。

 もちろん,最初からFTP用,Web用,メール用などと,IPアドレスを複数個用意しておき,1台のサーバー・マシンに割り当てておくことも可能だ。こうしておけば,サービス機能ごとにIPアドレスで区別でき,サーバーの負荷が高まってきたら,複数台のサーバー・マシンにばらすような運用が簡単にできる。

 1台のパソコンに複数のIPアドレスを割り当てる方法としては,サーバー・マシンに複数のLANカードを装着して,LANカードごとに異なるIPアドレスを割り当てる手がある。しかし,ハードウエアに手を付けなくても,Windows2000やWindowsXPでは,ほんのわずかな操作だけで実現できる。

 その方法は,まずコントロール・パネルで「ネットワーク接続」のアイコンをダブルクリックする。開いたウインドウで,「ローカルエリア接続」のアイコンを右クリックして,メニューからプロパティを選ぶ。これで「ローカルエリア接続のプロパティ」ウインドウが開く。さらに,ここで「この接続は次の項目を利用します」の項目の中から「インターネットプロトコル(TCP/IP)」を選んで,下にあるプロパティ・ボタンを押す。これでTCP/IPの設定ウインドウが出る。さらに,「次のIPアドレスを使う」を選んで,一つめのIPアドレスとサブネット・マスク,デフォルト・ゲートウエイの値を入力する。ここまでは,1台のパソコンに一つのIPアドレスを割り当てるケースと同じだ。

 次に,ウインドウ下にある「詳細設定」ボタンを押して開いた設定ウインドウで「追加」ボタンを押すと新しいウインドウがポップアップし,そこに追加するIPアドレスとサブネット・マスクを入力すれば,2個目のIPアドレスを追加登録できる。IPアドレスを追加するための設定ウインドウを出すまでが少し面倒だが,設定方法自体はとても単純だ。

塗谷 隆弘